明治天皇の御製(和歌)ちはやふる神のをしへをうけつぎし人のこころぞただしかりける

後輩から和歌の解説の依頼をもらいました♪
御製(天皇陛下の和歌)であれば、私も学びを深めて参りたいので、このような依頼はとっても嬉しいです。

ちはやふる
神のをしへを
うけつぎし
人のこころぞ
ただしかりける

現代語訳

神の教えを受け継いだ人の心というのは、正しいのだなあ。

古典文法・古文単語解説

ちはやふる
「神」などの前にある枕詞です。「ちはやぶる」と、濁点が付くことが多いです。原則、訳しません。
(漢字だと「千早振る」で、巨大な力を持つという意味)
※百人一首にも「ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くぐるとは」という歌がありますね!マンガや映画で有名な『ちはやふる』の題名の由来となっている歌です。

をしへ
漢字にすると「教え」。

(うけつぎ)し
過去の助動詞「き」の連体形。

(人のこころ)ぞ
強調の係助詞。

(ただしかり)ける
詠嘆の助動詞「けり」の連体形。
※係助詞「ぞ」の係り結び

和歌を味わう

明治天皇の御製の中に、「ちやはふる」が登場する歌は三十首あるそうです。
(田所泉『歌くらべ明治天皇と昭和天皇』より)

皇祖皇宗(皇祖は天照大神、皇宗は歴代の天皇)、つまり天皇陛下にとってのご祖先を指すような歌も見かけますので、この歌についても、「ちやはふる神の教え」は皇祖皇宗の教えを指しているのかもしれません。

それって具体的にどんな教え?!って疑問に思いますよね。
確証はありませんが、『日本書紀』にある以下のような神勅を指すのでしょうか・・・

・豊葦原(とよあしはら)の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂(みずほ)の国は、是(こ)れ、吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるべき地(くに)なり。宜(よろ)しく爾(いまし)皇孫(すめみま)、就(ゆ)きて治(しら)せ。行矣(さきくませ)。宝祚(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさむこと、当(まさ)に天壌(あめつち)と窮(きはま)り無かるべし。
※こちらの読みは伊勢の神宮のHPを参考にしました。

・八紘(あめのした)を掩(おお)ひて宇(いえ)と為す
※橿原神宮のHPによりますと「天地四方八方の果てに至るまで、この地球上に存在する民族が、あたかも一軒の家の中に住むように、皆仲良く暮らすというもので世界平和の理想を掲げています。」という意味です。
※この言葉をもとに八紘一宇というスローガンが流行ったのは明治ではなく昭和です。念のため。

あるいは、国民のことを大御宝(おおみたから)とも呼んで、「国やすかれ民やすかれ」と国民の幸せを祈り続けてこられた大御心を指すのかもしれません。

 

では下の句も味わってみましょう。
「人のこころ」の「人」って誰でしょうか?

古文単語の「人」には多くの意味がありますが、
ここでは「立派な人・優れた人」「(特定の人を指して)あの人」「世間の人」などが当てはまりそうです。

通常、「人」という語では自分は指さないので、誰かを思い浮かべているのか、あるいは上の句に該当する人すべてを指しているのでしょうか。

たとえば、明治維新を成し遂げた人たちとか?!
幕末の志士達や、近代化に貢献した人達や、条約改正に貢献した人達…

いったいどのような方をイメージして詠まれたのでしょうね☆彡

 

参考

インターネットで検索してきた中で出てきた訳も参考にさせていただきます。
伝統板・第二 というサイトです。

教 (明治三十八年)

神代より連綿として受け継がれて来た御祖の教えを守り伝えていく精神こそが、日本人として正しい道なのです。

このサイトによると、明治三十八年、つまり1905年に詠まれた歌のようですね。
日露戦争が1904年2月から1905年9月なので、戦争中か直後です。

「御祖」は「みおや」と読みます。先祖の尊敬語です。

下の句がかなり思い切った意訳になっていますが、こういう解釈もアリなのでしょうね。

 

おまけ(をしへ)

明治天皇の御製で「をしへ」が出てくる歌のうち、好きな二首もご紹介します。

たらちねの親のをしへは誰もみな世にあるかぎり忘れざらなむ
(訳:親から教わったことは誰もが皆、生きている限り忘れないで欲しい)

たらちねの庭のをしへはせばけれど広き世にたつもとゐとはなれ

(訳:家庭で教わったことは範囲が限られていることではあるけれど、広い世の中で活躍する基礎となるものだ)

 

先祖や親から教わったことを大事にされた明治天皇の御製を学ぶと、私も親や祖父母から教わったことを大事にしたいなと感じます☆彡

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

今日も一日、あなたがイキイキと生きられることをお祈り申し上げます✨

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