昭和天皇の御製(和歌)あら玉のとしをむかへていやますは 民をあはれむこゝろなりけり

和歌の解説のご依頼をいただきました。関東大震災に関する御製です。

あら玉の
としをむかへて
いやますは
民をあはれむ
こゝろなりけり

現代語訳

新年を迎えていっそう増すのは、(関東大震災の被災で苦しんでいる)国民を憐れに思う気持ちであるなあ。

古典文法・古文単語解説

あら玉の
「年」などの前にある枕詞です。原則、訳しません。
※漢字だと「新玉の・荒玉の」なので、ここでは二句目の「年を迎えて」に掛かって「新年」の意味も含まれていると思われます。
※この御製の題が「新年言志」となっております。

いやます
漢字にすると「弥増す」。「いっそう増える」。

あはれむ
ここでは現代語と同じ「憐れに〔可哀そうに・気の毒に〕思う」の意味。
※古語としては他に「(心にしみじみと)深く感じる」「慈しむ・愛する」の意味があります。

なりけり
断定の助動詞「なり」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の終止形。

31音(おん)口語訳

新年を
迎え 増しゆく
震災で

苦しむ民を
憐れむこころ

和歌を味わう

昭和天皇が御年二十四歳、摂政でいらっしゃった大正13年。
歌会始にて、お詠みになった歌です。

前年大正12年9月1日の関東大震災後、翌日には余震が続く中、山本権兵衛内閣の親任式に臨まれました。
また、東京府・神奈川県の被災地へ行啓されて悲惨な被害の実態をご自分の目で視察されています。

皇太子が直接被災地を見舞われるのは当時にあっては異例なことだそうです!
その後も復興へ向けて震災対応に尽力されました。
宮内庁HPに被災地御視察の写真などがございます。

このように政治の最前線で被災状況を把握し、対応なさっていたからこそ、新年が明けてもまだまだ被災に苦しむ国民のこころに寄り添い、憐れんでいらっしゃるのでしょうね。

きっと「4ヶ月経って、年も明けたのに、国民はまだまだ苦しい…」という思いなのでしょうね。

「いやますは」という腰の句(三句目)に強い憐憫の情を感じます。

 

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

今日も一日、あなたがイキイキと生きられることをお祈り申し上げます✨

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