花の香を風のたよりにたぐへてぞ 鶯さそふしるべには遣る 紀友則

2月末に、茶道教室の掛け軸で見かけたお歌のご紹介です♪

暦の上では春なので、春を象徴する「鶯(ウグイス)」に関する歌です。
「ウグイスがまだ鳴いてくれない。早く聞きたいよ!」という場面を思い浮かべて、こちらの歌を味わっていただければと思います。

花の香を風のたよりにたぐへてぞ 鶯さそふしるべには遣る 紀友則

花の
風のたよりに
たぐへてぞ
うぐいすさそふ
しるべには
  紀友則きのとものり

訳:ウグイスよ、
  梅の香りを
  風さんに
  運ばせるから
  ここ来て、鳴いて。

意訳:(梅の)花の香りを、風という運送人にたずさえ(させ)て、鶯を(谷から)誘い出す道しるべとしては派遣する(から、出て来て春を知らせる声を聞かせてくれよ)。

★『古今和歌集』(巻第一 春歌上)十七番目の歌です。

★現代語の「風の便り」(どこから伝わって来たともわからないうわさ。風聞ふうぶん。)は元々は上記の歌のような「風が使いとなって物を吹き送ること。風が知らせてくること。」の意味から転じています☆

★紀友則は『古今和歌集』の選者で、百人一首の以下の歌が有名です。
 どちらの歌も、自然のものに呼びかけているのが素敵です。

ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ 紀友則

ひさかたの
光のどけき
春の日に
しづ心なく
花の散るらむ

訳:春うらら
  桜に宿る
  妖精は
  なぜにこんなにも
  慌てん坊か

意訳:日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく(こんな風に慌ただしく、)桜の花は散っているのだろう。

他にも百人一首の31音口語訳はこちら

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