小学生向け『ドラえもんの国語おもしろ攻略 俳句・短歌がわかる』(小学館)に載っている短歌
小学生にも読みやすいマンガが中心の本『ドラえもんの国語おもしろ攻略 俳句・短歌がわかる』には、短歌が47首掲載されています。
その中から、オススメの和歌をご紹介します。
※31音口語訳や「意味」の部分はドラえもんの本とは違ってオリジナルです。
ドラえもんが好きな子は、ぜひ『ドラえもんの国語おもしろ攻略 俳句・短歌がわかる』の本も読んでみましょう。
(図書館にあることもありますよ。)
春の短歌
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ 菅原道真
匂ひおこせよ
梅の花
あるじなしとて
春な忘れそ
菅原道真
香りを送れ。
梅の花。
我いなくとも
春忘れるな。
意味:(私が京都のここを去っても、春の)東風が吹いたら、(風に託して)その香を(太宰府にいる私のもとへ)送ってよこしなさい、梅の花よ。主人がいなくなったからといって、(花を咲かせる)春を忘れてはいけないよ。
★この歌が起こした奇跡か?!太宰府天満宮には、京都から飛んできたとされる梅の木があります。
「飛梅伝説」といわれるもので、太宰府天満宮のHPにも載っています。以下、引用です。
菅原道真公は、京都から大宰府へいわれのない罪で左遷される折、自邸の梅の木に「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と歌で別れを告げられました。
道真公を慕った梅の木は、一夜にして大宰府まで飛んできたと伝えられます。
いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重に匂ひぬるかな 伊勢大輔
奈良の都の
八重桜<
けふ九重に
匂ひぬるかな
伊勢大輔
奈良で咲いてた
八重桜。
きょう、宮中で
咲き誇ってる。
★「きょう」は今日&京都(平安京)です。『百人一首』61番目の歌です。
人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける 紀貫之
心も知らず
ふるさとは
花ぞ昔の
香に匂ひける
紀貫之
心の変化は
知らないが、
梅の香りは
昔と同じ。
意味:(自分以外の)人は、さあどうだか、心の中はわかりません。(けれども)昔なじみのこの里は、梅の花が昔と変わらない(素晴らしい)香りで咲いているなあ。
★『百人一首』35番目の歌です。
山もとの鳥の声ごゑ明けそめて 花もむらむら色ぞ見え行く 永福門院
鳥の声ごゑ
明けそめて
花もむらむら
色ぞ見え行く
永福門院
意味:山のふもとで、(あちこちから)鳥のさえずり(が聞こえ出し)、(春の)夜が明けはじめ、(桜の)花もあちこちに群がって咲く色が、(明るくなってきたことで)見えてくる。
★鎌倉時代後期の歌です。
霞立つながき春日にこどもらと 手毬つきつつこの日暮らしつ 良寛
ながき春日に
こどもらと
手毬つきつつ
この日暮らしつ
良寛
意味:長い春の日に、子どもたちと何度も手毬をついて、この一日を暮らした。
★江戸時代後期のお坊さんの歌です。良寛さんは、子供好きな方でした。
「霞立つ」は「春日(かすが)」にかかる枕詞。訳さなくてもよいでしょう。
夏の短歌
向日葵は金の油を身にあびて ゆらりと高し日のちひさきよ 前田夕暮
金の油を
身にあびて
ゆらりと高し
日のちひさきよ
前田夕暮
金の油の
ような日を
浴びてそびえる。
日は小さいな。
意味:ひまわりは、黄金の油(のような真夏の日光)を全身に浴びて、ゆらりと高い。(それと比べると、)太陽が小さい(ように見える)。
秋の短歌
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
目にはさやかに
見えねども
風の音にぞ
おどろかれぬる
藤原敏行
目でははっきり
見えないが、
風の音から
「秋だ!」と気づく。
意味:秋が訪れたと、目でははっきりと見えないけれども、風の音に「秋だ!」と気づかされたことだ。
★『古今和歌集』の歌です。「秋立つ日よめる」(立秋の日に詠んだ)とあるので、立秋の日に思い出したい歌です♪
冬の短歌
田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ 不尽の高嶺に雪は降りける 山部赤人
うち出でて見れば
真白にぞ
不尽の高嶺に
雪は降りける
山部赤人
海辺を通り
富士山を
見上げてみると
雪が降ってる
意味:田子の浦を通って出て、(遥か遠くを)見ると、真っ白に富士の高い頂上に、雪が降り積もっていることだ。
★上記は万葉集バージョンです。百人一首4番バージョンは少し違って「田子の浦にうち出でて見れば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ」です。
旅の短歌
天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも 安倍仲麿
ふりさけ見れば
春日なる
三笠の山に
出でし月かも
安倍仲麿
彼方を見れば
ふるさとで
見ていた月が
ここでも見える
意味:(旅先の)大空をはるかに仰ぎ見ると、(以前に故郷の)春日にある三笠山から出ていた(のと同じ)月だなあ。
★百人一首7番の歌です。
人生の短歌
たのしみはまれに魚煮て子ら皆が うましうましと言ひて食ふ時 橘曙覧
まれに魚煮て
子ら皆が
うましうましと
言ひて食ふ時
橘曙覧
たまに魚を
食べさせて
子らが「うまい!」
うまい!」と言うとき
意味:楽しみは、(貧しい暮らしの中でも)たまに魚を煮て、子供たち皆が「美味しい!美味しい!」と言って食べる(のを見る)時だよ。
隣室に書よむ子らの声きけば 心に沁みて生きたかりけり 島木赤彦
書よむ子らの
声きけば
心に沁みて
生きたかりけり
島木赤彦
音読する子の
声聞けば、
しみじみ思う。
もっと生きたい。
意味:隣の部屋で本を音読する子供たちの声を聞くと、しみじみと感動して、(もっと)生きたい(という気力が湧いてくる)なあ。
★病床で詠んだ歌です。
愛情の短歌
ものいはぬよものけだものすらだにも あはれなるかなやおやのこを思ふ 源実朝
よものけだもの
すらだにも
あはれなるかなや
おやのこを思ふ
源実朝
動物だって
子を守る。
感動するね。
親の愛情。
意味:(人間とは違って)何(の言葉)も言わない、あちらこちらの動物でさえも、ああ感動的だなあ、親が子を思う(様子に触れると)。
★小学校の国語の教科書で見かける『手袋を買いに』も、動物親子の愛情を感じます。
★源実朝の和歌については、他にもこちらやこちらのページで紹介しています。
恋の短歌
月やあらぬ春や昔の春ならぬ 我が身一つはもとの身にして 在原業平
春や昔の
春ならぬ
我が身一つは
もとの身にして
在原業平
春の景色は
去年とは
変化したのか?!
私以外は。
意味:(この)月は(去年の月とは)違うのか。(この)春(の景色も去年のそれとは)違うのか。(あの人を失い)私の身一つが以前のままであって(他のすべてが変わってしまったように感じる)。
★『伊勢物語』や『古今和歌集』に登場する歌です。
高貴な女性と無理やり別れさせられた男が一年後に、彼女が住んでいた思い出の場所を訪れて詠みました(切ない)。。
宮廷の短歌
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ 乙女の姿しばしとどめむ 僧正遍昭
雲の通ひ路
吹きとぢよ
乙女の姿
しばしとどめむ
僧正遍昭
道を閉ざせよ。
舞姫の
天女を空に
帰らせないよう。
意味:大空の風よ、(天女が帰っていく)雲の中の通路を(雲を吹き寄せて)閉ざしておくれ。(美しい)天女の姿を、もうしばらく(この地に)留めておこう。
★百人一首12番の歌です。
大江山いく野の道の遠ければ まだふみも見ず天の橋立 小式部内侍
いく野の道の
遠ければ
まだふみも見ず
天の橋立
生野に行かず
踏み入れず。
母からのふみ(=手紙)
見ておりません!
★百人一首の60番の歌です。
★母親が歌人として有名な和泉式部なので、「今度の歌会、お母さんに代作してもらうんでしょ?」とからかわれた際に、即興で詠んだ歌。
ちなみにからかったのは藤原定頼。百人一首64「朝ぼらけ~」の作者です。
詩歌の短歌
牛飼が歌よむ時に世のなかの 新しき歌大いにおこる 伊藤左千夫
歌よむ時に
世のなかの
新しき歌
大いにおこる
伊藤左千夫
私が詠んで
世の中に
新しい歌
たくさん生むぞ!
意味:牛飼い(である私)が歌を詠む時に、世の中に新しい歌がたくさん生まれる。
★伊藤幸男は東京で牧場を経営していました。
★和菓子屋さんの包装紙にこの歌が載っているのを見かけたことがあります♪