令和5年(2023年)宮中歌会始 素敵な歌五選~皇族・選者の歌編~

令和5年(2023年)宮中歌会始、お題は「友」でございました。

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不遜ながら、「この歌、素敵!」と感じた歌をセレクトさせていただきました。

1.調べがいい!友らと共に♪

彼方此方(をちこち)
友らと共に
行巡(ゆきめぐ)
聞き初(そ)めしことに
喜びありぬ

皇嗣殿下の御歌です。
なんといっても調べが最高です!
和歌は調べが命
調べとは、言葉の音の響きの流れこと♪

「ともらと、ともに、」の音調、いいんですよね。
上の句は初句は「を」、二句目は「と」、三句目は「ゆ」と、
いずれも穏やかな音で始まっています。

テーマも、旅行の楽しさを思い出させてもらえて、どこかに出かけたくなります♪

現代語訳(意訳)

あちらこちらを友らと共に出かけて巡ったなあ。
訪問先ではいつも、初めて聞かせてもらう話があって、友とみんなで「へ~!」と喜んだなあ。

古典文法・古文単語解説

彼方此方(をちこち)
あちらこちら。

(聞き)初め
補助動詞「初(そ)む」の連用形。
初めて~する・~し始める。

(聞き初め)し
過去の助動詞「き」の連体形。

(あり)ぬ
完了の助動詞「ぬ」の終止形。

背景の解説 宮内庁より

 秋篠宮皇嗣殿下は、高校生の頃から十数年前まで、いろいろな場所をお知り合いの方々と訪ねて回られました。 特に総合研究大学院大学のプロジェクトに参加されていた時は、殿下を含む参加者が訪問先の地元の人たちにさまざまな質問をし、そこから得られる答えに新鮮さと心弾むような気持ちを覚えられたそうです。そのような思い出をお詠みになりました。

2.ドラマが感じられる♪そして気になる♪

卒業式に
友と撮りたる
記念写真
裏に書かれし
想ひは今に

佳子内親王殿下の御歌です。
ご友人が記念写真を印刷して、その裏にメッセージを書いてくれてプレゼントしてくれたそうです。

いまどき、写真は画像をLINEで送って共有することが多いと思うのですが、わざわざ印刷して、裏にメッセージも書いてくれたなんて、エモいです。

そしてどんなメッセージが書かれてあったのかは、この和歌からはわからないので興味をひかれますね!
(例えばこんなメッセージだったのかな・・・、と書いてしまうのは野暮ったいので、それぞれが心の中で想像しましょう♪

「想ひは今に」とあるので、今現在も、その想いを大事にしていらっしゃるようですね!

背景の解説 宮内庁より

 佳子内親王殿下には、高校の卒業式の日にご友人お二人とお写真を撮られました。後日、ご友人が印刷したお写真の裏にメッセージを書いて渡してくださり、その想いが三人の中で今も続いていると感じられたことを歌にお詠みになりました。

3.場所が友を思い出させる♪

もみぢ葉の
散り敷く道を
歩みきて
浮かぶ横顔
友との家路

愛子内親王殿下の御歌です。
たしかに、あるんですよね。
印象的な場所を歩くと、「あ、ここって誰々と歩いた道だ!」って。

私にも、友の顔が自然と思い浮かぶ場所ってあるなあと気づかせていただきました。

特に「もみぢ葉の散り敷く道」っていいですね!
想像するだけで、黄色や橙色や黄緑などの色とりどりの世界で、
足元では落葉を踏むカサカサした音も聞こえてきそうです。
(視覚と聴覚など、複数の五感を刺激してくれる歌って素敵です♪)

1月なのに、秋が恋しくなっちゃいました。

背景の解説 宮内庁より

 佳子内親王殿下には、高校の卒業式の日にご友人お二人とお写真を撮られました。後日、ご友人が印刷したお写真の裏にメッセージを書いて渡してくださり、その想いが三人の中で今も続いていると感じられたことを歌にお詠みになりました。

4.こぼれてしまった・・・

器から
こぼれてしまった
言の葉を
静かにつむぐ
友の横顔

彬子(あきこ)女王殿下の御歌です。

語った友人と、聴いていた彬子女王殿下。
それぞれどんな思いだったのでしょう。。。

本当につらいとき、思いを静かに受け止めてくれる友人の存在はかけがえがないものですね。

「器から」という表現から、本当にいっぱいいっぱいのお気持ちだったのだろうなと、
ひしひしと伝わります。

背景の解説 宮内庁より

 一人でいろいろなものを背負って走り続けてきたご友人が、その重さと辛さについてぽつりぽつりと打ち明けてくれる横顔をご覧になりながら「少しでもその荷を軽くする手助けが私にできたらいいな」とお思いになった夜のことをお詠みになったお歌です。

5.月蝕ののちの望月

月蝕(げっしょく)
のちの望月(もちづき)
くまもなき
地上にわれが
友垣(ともがき)がゐる

現代語訳(意訳)

月蝕の後の満月。
曇りも無く、月光がすべてを照らし、
この地上に私が、そして友が、存在している。

古典文法・古文単語解説

望月(もちづき)
満月。

くま(隈)
曇り・かげ。

友垣(ともがき)
友達・親しく交わる友人。

ゐる(居る)
1.存在する 2.座る 3.滞在する など
ここでは1.の存在する。
(座るの意味もあることから、作者と友人が並んで座ってお酒でも飲みながら月を見ていてそうだな、なんて想像もしてしまいます♪)

和歌を味わう

選者 歌人の三枝昂之氏の御歌です。

今年の選者4名のうち、もう1名も月食をテーマに詠んでいらっしゃいました。
私が参加してきた歌会でも、月食や日食があれば、和歌に詠む方が多いです。
やっぱりスケールが宇宙にまで広がるので、歌として良いんですよね♪

ちなみに令和四年に日本で見られた皆既月食は11月8日でした。
前日の11月7日が立冬でした。
初冬の澄んだ空に浮かぶ皆既月食
改めて想像するだけで、いいですねえ。

それにしても、この歌は月食を実にあざやかに、スケール大きく使っているなあと感心します。

月食と満月の対比と、
天と地の対比と、
自分と友人との対比。

月食と満月は時の移ろいを、
天と地は距離の長さを、感じさせます。
自分と友人は……「ここにいる」という点で同じだという印象を受けます。

「ゐる」という言葉だけで、
作者の友の存在への安心感・信頼感・喜びなどが伝わってきます。

まとめ

以上!
皆さんはお好きな和歌はありましたか?

私は和歌は「もののあはれ(人の情)」への理解を深めさせてくれるものだと思っています♪
皆さまの感性を豊かにするものの1つとして、味わっていただけますと幸いです。

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