令和5年(2023年)宮中歌会始 素敵な歌五選~詠進歌編~

令和5年(2023年)宮中歌会始、お題は「友」でございました。

御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)と皇后陛下御歌(みうた)についてのページはこちら。
素敵な歌五選~皇族・選者の歌編~はこちら。

詠進歌、つまり一般的な国民の和歌から、特に素晴らしいと選ばれた歌は全部で10首です。
1万5千首以上の中から選ばれた10首。
その中から、さらに私の好みで選ばせていただいた歌をご紹介します。
「10首全部見たい。佳作も見たい。」という方は、宮内庁HPのこちらをどうぞ。

1.夫となりぬ

温もりの
残る手袋
渡されて
君は友より
夫となりぬ

岡山県 藤井正子さんの歌。
「友」というお題で、友のことばっかり考えてしまっていたけれど、
伴侶のことを詠むのもアリかぁ!と気づかせていただきました。

夫婦になる前は「彼」や「彼女」と言いがちですが、「友」でもいいですよね。

そして上の句がエモい
優しい!素敵!

世の男性方、なんと歌会始の和歌から、モテテクニックを学べちゃいますね(笑)。

古典文法・古文単語解説

(友)より
~から。起点の格助詞。

(なり)ぬ
完了の助動詞「ぬ」の終止形。


※こちらは7音にするために「おっと」と読んでいると思われます。
古語だと「つま」と読むことが多いです。

2.友だちはゐないんだよ

友だちは
ゐないんだよと
言ふ君の
瞳の中に
わたしを探す

新潟県 相川澄子さんの歌。

ご友人は人を信じることが出来なくなってしまったのでしょうか。

作者はご友人のことを、友だちだと思っているのでしょう。
だからこそ、「私がいるよ!私をどう思っているの?!」とご友人の瞳に自分がどのように映っているのかじっと見つめたのでしょう。

下の句の「瞳の中にわたしを探す」は
具体的な行動(瞳を見る)と、
抽象的な行動(友人の心を探る)が
織り交ざっている感じがして、奥深く感じました。

3.ともだち100人できるかな♪

「母さんも
友だちできた?」と
小一の
吾子(あこ)に問はれし
仕事の初日

島根県 榛松友香さんの歌。
小学一年生と言えば、「一年生になったら、一年生になったら、ともだち100人できるかな♪」って歌がありますよね。
作者さんもお子さんの小学校入学前後に「お友だちできるかな?」なんて話をしていたのだと思います。

そうやって気にかけてくれた親の真似をして、
子どももお母さんに尋ねたのでしょう。

仕事の初日というのは、多くの人が上手く人間関係を築けるかどうか不安があるものです。
お子さんにこんな風に声をかけてもらったら、
我が子も新しい環境で頑張ってるんだから、自分も頑張ろう!という気持ちが湧いてきそうですね!

 

また、この歌が選ばれているのを見て、会話文の鍵括弧もアリなんだー!!!という驚きがありました。
これまで、「完全に古語じゃなくて、現代語の単語や文法が混じっていても選ばれているなあ」とは思っていましたが、
会話文の鍵括弧はさすがにダメかなと思って、詠むのを控えていました。

けど、大丈夫なら、私としては嬉しいです♪
古文漢文の講師をしているとはいえ、多くの人に和歌に親しんでいただきたいので、
詠みやすさが増すのは大歓迎♪

和歌って自分の心が大きく動いた場面を想像すると詠みやすくなるのですが、
誰かの言葉が場面の中心であることが多々あります。
(子育て中だと特に、子供の言葉にハッと心を動かされがちです)

詠んでみたいけど、詠んだことがほとんどない方。
会話文の鍵括弧つきの和歌から詠んでみてはいかがでしょうか?

古典文法・古文単語解説

吾子
我が子。

(問はれ)し
過去の助動詞「き」の連体形。

4.あだ名

友の呼ぶ
僕のあだ名は
わるくない
他のやつには
呼ばせないけど

山梨県 中学二年生 小宮山碧生くんの歌。
いいですねー!親友との友情、親友と他のクラスメイトを分けて、特別に思っている感じ、素敵です!

テレビ山梨のニュース記事で見かけたのですが、あだ名は「ぶるっくす」だそうです。
というのも、名前が碧生(あおい)で、名前のブルーから親友が名付けたとのこと。

同記事で、こんな感想を答えています。

友達の関係が認められたじゃないですけど、そんな感じがあって(入選を聞いて)うれしかったです。より仲が深まったなと思いました。

また、NHK山梨のニュース記事には、こんなことが書かれてありました。

このあとの記者会見で、小宮山さんは、「歌の中で、あだ名について詠んだのですが、天皇陛下から中学生のころのあだ名を教えてもらいました。趣味に関連して友だちから『じい』というあだ名をつけてもらったということで、天皇陛下にもあだ名があったんだなと親近感がわきました」と話していました。

天皇陛下がそんな風にお話しして下さるのですね!

5.泣いてゐる子の頭を撫でる

友といふ
言葉を知らぬ
一歳が
泣いてゐる子の
頭を撫でる

京都府 丹羽紗矢香さんの歌です。
小さい子が小さい子のお世話をしようとしているのって本当にかわいいですよね。
(漫画(及びアニメ)の『赤ちゃんと僕』を読んでいてもキュンキュンしていました。)

うちの娘(5歳)も小さい子が泣いていると「だいじょうぶ?」と声かけて、頭を撫でにいこうとします。
一歳でも、泣いている子を見ると、「かわいそう。なでてあげよう」って思うんですね💕

古典文法・古文単語解説

(知ら)ぬ
打消の助動詞「ず」の連体形。

(泣いて)ゐる
ずっと~ている・~しつづける。
動作・状態が継続する意を表す補助動詞。

まとめ

様々な年代の「友」に触れることができました♪

自分もいろんな年代において、その時の友に支えられてきて、
今があるんだなと改めて感じます。

今回は歌会始で3つの記事を書いています。よろしければ、他もご覧ください。
御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)と皇后陛下御歌(みうた)についてのページはこちら

素敵な歌五選~皇族・選者の歌編~

 

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