昭和天皇の御製(和歌)ふりつもるみ雪にたへていろかへぬ松ぞををしき人もかくあれ
東日本大震災の直後に、福島県の友人が靖国神社に訪れたところ、この御製が書かれてあったそうで、
その友人は大変勇気づけられたと言っていました。
(漢字表記)降り積もる深雪に耐えて色変えぬ 松ぞ雄々しき人もかくあれ
上皇陛下(当時、天皇陛下)が平成23年3月16日に出されましたビデオメッセージ「東北地方太平洋沖地震に関する天皇陛下のおことば」にも、「雄々しさ」という言葉がございますので、それを受けて、靖国神社の方が選んでくださったのかもしれません。
そして,何にも増して,この大災害を生き抜き,被災者としての自らを励ましつつ,これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに深く胸を打たれています。
(参考)宮内庁HPに全文がございます。
ふりつもる
み雪にたへて
いろかへぬ
松ぞををしき
人もかくあれ
現代語訳
降り積もる雪に耐えていても、そのつらさを見せない松は勇ましい。人もこのようであってほしい。
古典文法・古文単語解説
深雪(みゆき)
雪の美称で「み」が付けられることもありますが、
ここでは「深く積もった雪」。
色変へぬ
「色変える」は「(感情に左右されて)顔色を変える」。
「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。
※松の色とも解釈できますが、「人もかくあれ」なので擬人法的に「顔色」だと思われます。
百人一首にも「忍れど 色に出でにけり 我が恋は~」とあります。
参考までに、漢文語彙に以下のものがあります。(受験生は知っておきましょう)
・「色ヲ失フ」 驚き・恐怖で)真っ青になる
・「色ヲ作(な)ス」(怒って)顔色を変える
・「色ヲ正(ただ)ス」真面目な顔つきをする
(松)ぞ
強調の係助詞。
雄々しき
勇ましい・男らしい。
※係助詞「ぞ」の係り結びで連体形
かく
指示語「このように」。
あれ
「あり(~状態〔存在〕である)」の命令形。
31音(おん)口語訳
積雪に
耐えるつらさを
見せぬ松。
手本にしよう。
この勇ましさ。
和歌を味わう
終戦から四か月後の昭和21年の歌会始にて発表された歌です。
この歌に、どれだけ多くの国民の心が励まされたことでしょう。
元京都大学総長の平澤興先生は「人生は にこにこ顔の命がけ」と仰っていましたが、大変な逆境を平気な顔して乗り越えるには、本当に強い強い精神力が必要だと思います。
「今が踏ん張り時だから、一緒に耐えよう!」と声をかけてくださっているように感じます。
四句切れになっており、結句の「人もかくあれ」という呼びかけが際立っています。
「励ましの想いよ届け!」という祈りが込められているのではないでしょうか。
おまけ(ををしき)
明治天皇の御製にも「ををしき」が入っている歌がございます。
敷島(しきしま)の
大和心の
雄々(をを)しさは
ことある時ぞ
あらはれにける
(訳:日本人の大和魂の勇ましさは、有事の時にこそ現れる)
逆境のときにこそ、勇ましく、周りを勇気づける表情をしていられるリーダーでありたいなと感じます☆彡
今日も一日、あなたがイキイキと生きられることをお祈り申し上げます✨