小学生・幼児に贈りたい和歌

新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいや重け吉事 大伴家持

ゆきがふったら、おもしたいうた

あらたしき
としはじめの
初春はつはる
今日きょうゆき
いや吉事よごと
  大伴家持おおとものやかもち

やくけまして
  おめでとうの
  もる
  ゆきおなじに
  もれいこと!

(意味)新しい年の初めの新春である今日、雪が降り積もって重なるように、良い事が次々と重なりますように。

(いみ)あたらしい としの はじめの しんしゅんである きょう、ゆきが ふりつもって かさなるように、よいことが つぎつぎと かさなります ように。

★「あたらしき」ではなく「あらたしき」です。むかし言葉ことばで「あたらしい」は「あらたし」でした。
★『万葉集まんようしゅう』という日本でいちばん古い和歌の本の、いちばん最後さいごの歌です。

たのしみはまれに魚煮て子ら皆が うましうましと言ひて食ふ時 橘曙覧

魚をたべるときに、おもしたいうた

たのしみは
まれにうを
みな
うましうましと
とき
  橘曙覧たちばなのあけみ

訳:たのしみは
  たまにさなか
  べさせて
  らが「うまい!」
  うまい!」とうとき

(意味)楽しみは、(貧しい暮らしの中でも)たまに魚を煮て、子供たち皆が「美味しい!美味しい!」と言って食べる(のを見る)時だよ。

(いみ)たのしみは、まずしい くらしの なかでも たまに さかなを にて、こどもたち みんなが「おいしい!おいしい!」といって たべるのを みるときだよ。

★この作者さくしゃは「たのしみは~とき」というシリーズの歌をたくさんよんでいます。ほかにもこちらの歌

石走る垂水の上の早蕨の 萌え出づる春になりにけるかも 志貴皇子

はるだなぁとおもったときに、おもしたいうた

石走いわばし
垂水たるみの上の
わらび
づるはる
なりにけるかも
  志貴皇子しきのみこ

訳:ゆき
  水量すいりょう
  たきのそば
  わらび
  はるになったね!

(意味)(雪が溶けて川の水量が増え)岩の上を走るように流れ落ちる滝のそばで、若いワラビの芽が出る春になったのだなあ。

(いみ)ゆきが とけて かわの すいりょうが ふえ、いわの うえを はしるように ながれおちる たきの そばで、わかい わらびの めが でる はるに なったのだなあ。

★「さわらび」というのは、「芽を出したばかりのワラビ」です。

春は花夏ほととぎす秋は月 冬雪冴えて涼しかりけり 道元

花や月を見たときに、おもしたいうた

はるはな
なつほととぎす
あきつき
冬雪ふゆゆきえて
すずしかりけり
  道元どうげん

訳:はるさくら
  なつはほととぎす、
  あきつき
  ふゆゆき
  こころきよらか。

(意味)春は桜、夏はほととぎす、秋は月、冬は雪が澄んで見えて、清々すがすがしいことだ。

(いみ)はるは さくら、なつは ほととぎす、あきは つき、ふゆは ゆきが すんでみえて、すがすがしいことだ。

川端康成かわばたやすなりという有名ゆうめい作家さっかさんが、ノーベルしょう受賞記念講演じゅしょうきねんこうえん冒頭ぼうとう引用いいんようしている歌です。

あかあかやあかあかあかやあかあかや あかあかあかやあかあかや月 明恵上人

明るい月を見たときに、おもしたいうた

あかあかや
あかあかあかや
あかあかや
あかあかあかや
あかあかやつき
  明恵みょうえ上人しょうにん

訳:あかるいな。
  明々あかあかとして、
  あかるいな。
  あかるいあかるい
  あかるいつきだ!

(意味)とても明るいなあ。とてもとても明るいなあ。とても明るいなあ。とてもとても明るいなあ。とても明るい月だなあ。

(いみ)とても あかるいなあ。とても とても あかるいなあ。とても あかるいなあ。とても とても あかるいなあ。とても あかるい つきだなあ。

★お月さまのことが、とっても大好きなおぼうさんがよんだ歌です。

稽古とは一より習ひ十を知り 十よりかへるもとのその一 千利休

ならいごとのときに、おもしたいうた

稽古けいことは
いちよりなら
じゅう
じゅうよりか
もとのそのいち
  千利休せんのりきゅう

訳:ならいごと。
  まず一通ひととお
  おそわって、
  しゅうからは
  〈づき〉してく。

(意味)稽古というものは、一から始めて十まで到達したら、また最初の一に戻って学んでいくことが大事です。

(いみ)けいこ というものは、いちから はじめて じゅうまで とうたつしたら、また さいしょの いちに もどって まなんでいくことが だいじです。

千利休せんのりきゅうは、茶道さどうひろめた人です。

父母もその父母もわが身なり われを愛せよわれを敬せよ 二宮尊徳

父の日・母の日などに、おもしたいうた

父母ちちはは
その父母ちちはは
わがなり
われをあいせよ
われをけいせよ
  二宮尊徳にのみやそんとく

訳:父母ちちはは
  その父母ちちははから
  いだ
  自分じぶんいのち
  大事だいじかそう!

(意味)お父さんお母さんも、そのまたお父さんお母さんも、自分の命(の根源)だ。自分を愛しなさい。自分を大切にしなさい。

(いみ)おとうさん おかあさんも、そのまた おとうさん おかあさんも、じぶんの いのちの こんげんだ。じぶんを あいしなさい。じぶんを たいせつに しなさい。

★二宮尊徳は子どものころの名前なまえ金次郎きんじろう。二宮金次郎の銅像どうぞうは、とっても有名ゆうめいたきぎ背負せおって本をんでいます。

なせば成るなさねば成らぬ何ごとも 成らぬは人のなさぬなりけり 上杉鷹山

がんばる勇気ゆうきがほしいとき・わけしたくなったときに、おもしたいうた

なせば
なさねばらぬ
なにごとも
らぬはひと
なさぬなりけり
  上杉鷹山うえすぎようざん

訳:意志持いしもって
  やればなんでも
  できるんだ。
  できないとき
  意志いしりない。

(意味)(意志を持って)やれば成し遂げられる。(意志を持って)やらなければ、成し遂げられない。何事もそうだ。成し遂げられないのは、その人が(意志を持って)やらないからだよ。

(いみ)いしを もって やれば なしとげられる。いしを もって やらなければ、なしとげられない。なにごとも そうだ。なしとげられないのは、そのひとが いしを もって やらないからだよ。

★とても有名な歌です。ぜひ上杉鷹山のこの歌を覚えましょう。

大空にそびえて見ゆる高嶺にも 登れば登る道はありけり 明治天皇

がんばる勇気ゆうきがほしいとき・わけしたくなったときに、おもしたいうた

大空おおぞら
そびえてゆる
高嶺たかねにも
のぼればのぼ
みちはありけり
  明治天皇めいじてんのう

訳:大空おおぞら
  見上みあげるような
  目標もくひょう
  かなえる手段しゅだん
  絶対ぜったいにある。

(意味)大空にそびえ立っているように見える高い山の頂上へも、登ろうと思えば登る道はあるんだなあ。

(いみ)おおぞらに そびえたっている ように みえる たかい やまの ちょうじょうへも、のぞろうと おもえば のぼる みちは あるんだなあ。

★このホームページのき手が大好きな歌です。

若竹の伸びゆくごとく子ども等よ 真直にのばせ身をたましひを 若山牧水

身長しんちょうびたときに、おもしたいうた

若竹わかたけ
びゆくごとく
ども
真直ますぐにのばせ
をたまし
  若山牧水わかやまぼくすい

訳:若竹わかたけ
  びてくように
  どもらよ。
  ばせ。
  身体からだとこころ。

(意味)若い竹が伸びるかのように、子供たちよ、真っ直ぐに伸ばせ。身体を、魂を。

(いみ)わかい たけが のびるかのように、こどもたちよ、まっすぐに のばせ。からだを、たましいを。

★竹は1日で1メートル以上伸びることもあります。とっても成長が速いです。

 

なお、こちらのページでは、振り仮名は現代仮名遣いにしています。

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