大学入試に向けて、受験生は百首全部を覚える余裕は無いでしょう。
ただ、入試問題には「この設問は百人一首を覚えている人には簡単」というのがたまにあります。
特に和歌の修辞法は、例となる和歌で理解しておくことが重要です。
そこで、大学受験生向けに、「この歌の、これは覚えておいて!」というものをご用意しました☆彡
クイズ形式にしていています。
既に百首を覚えてるよっていう方も、大学受験に必要な知識が十分にあるか、確認のためにご利用ください。
※現在、問4まで作成しました。あと6問も近日中に追加します。
問1 以下の訳の▢▢に当てはまる2文字は?
77 瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ(崇徳院)
訳:川瀬の流れが早い▢▢、岩にせき止められる(滝のような)急流が(いったんは砕け分かれても)合流するように、(あの人との)仲を裂かれて(逢えずにいて)も、(行く末は)逢って結ばれようと思う。
\この歌のココがエモい♡/
「また会おうね」というメッセージの歌なんです♪
\(受験には使えない)訳うた/
邪魔されて
別れた川が
一つへと
合わさるように
また結ばれよう!
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正答:ので、から
解説:「(名詞)を(形容詞の語幹)み」の形で、原因・理由を表します。
※「を」は省略されることもあります。
↓ 読み方(歴史的仮名遣いのルールはこちら)

↓ 文法説明と現代語訳

・「岩にせかるる」の「せか」は四段動詞「せく」の連体形。
「せく〔塞く・堰く〕」は〈❶せき止める・妨げる ❷(男女の仲を)邪魔する〉。
ここでは両方の意味。
・初句から「滝川の」までが比喩的序詞。「~のように」と訳す。
・「われても」の「われ」は下二段動詞「わる」の連用形。
「わる〔割る・破る〕」は「分かれる・別々になる」。
ここでは(岩に当たって)水流が分かれることと、男女が別れることの両方をさす。
おまけ問題1 和歌の一部分「光を清み」の訳は?
おまけ問題2 和歌の一部分「山を高み」の訳は?
おまけ問題3 和歌の一部分「山深み」の訳は?
おまけ問題の答え
おまけ問題1 和歌の一部分「光を清み」の訳は?
正答:光が清いので・光が清く澄んでいるので
おまけ問題2 和歌の一部分「山を高み」の訳は?
正答:山が高いので
おまけ問題3 和歌の一部分「山深み」の訳は?
正答:山が深いので
※このように「(名詞)を(形容詞の語幹)み」の「を」は省略されることもあります。
問2 以下の和歌に含まれている掛詞は?
16 立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む(中納言行平)
答えと解説はこちらをクリック
正答:因幡と往なば、松と待つ
解説:掛詞を見つけるポイントは「繋がりがおかしい箇所」「不自然な平仮名」「地名」です。
主要な掛詞は必ず覚えておきましょう。
(志望校の過去問を分析して、漢字で書く必要があれば漢字で書けるように)
訳:お別れして(私は因幡の国〔≒今の鳥取県〕へ)去っても、その因幡の山の峰に生えている”松”のように、(私を)”待つ”と聞いたなら、すぐに帰ってくるつもりだ。
\この歌のココがエモい♡/
「呼んでくれたら、すぐ行くよ」という頼もしいメッセージ♪
\(受験には使えない)訳うた/
お別れし
因幡に行くが、
「戻って」と
聞いたらすぐに
帰ってこよう。
↓ 読み方(歴史的仮名遣いのルールはこちら)

↓ 文法説明と現代語訳

・「いなば」は地名「因幡」とナ変動詞「往ぬ」の未然形+接続助詞「ば」の掛詞。
・「まつ」は「松」と「待つ」の掛詞。
・二句目と三句目(いなばの~生ふる)は「まつ」を導く掛詞的序詞です。
・「今」はここでは仮定条件での未来の話なので、「すぐに」。
おまけ問題1 掛詞「あき」は何と何?
おまけ問題2 掛詞「うき」は何と何?
おまけ問題3 掛詞「おく」は何と何? ※ヒント:両方とも動詞です。
おまけ問題の答え
おまけ問題1 掛詞「あき」は何と何?
正答:秋と飽き
※「飽き」は相手の心が離れるという意味で詠まれることが多いです。
おまけ問題2 掛詞「うき」は何と何?
正答:憂きと浮き
※「憂き」は形容詞「憂し」(つらい)の連体形です。
おまけ問題3 掛詞「おく」は何と何? ※ヒント:両方とも動詞です。
正答:起くと置く
※露や霜がおりることを「置く」といいます。
問3 以下の和歌の▢▢に当てはまる平仮名2文字は?
18 住の江の岸に寄る波▢▢さへや夢の通ひ路人目よくらむ(藤原敏行朝臣)
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正答:よる
解説:序詞は<①比喩的序詞 ②掛詞的序詞 ③音調的序詞(同音反復による序詞)>の3種類があります。
この歌は「③音調的序詞(同音反復による序詞)」で有名な歌です。
訳し方は「~の〇〇ではないが」や「~〇〇という言葉のように」など。
訳:住の江〔≒今の大阪府住吉区〕の岸に”寄る”波、(その「よる」という言葉の)”夜”の夢の中の通い路でまでも、(あの人は)人目を避けているのだろうか。
※「夢の通ひ路」は夢の中で男が女のもとに通ってくる道。
\この歌のココがエモい♡/
「夜には来てよ💕」というお誘いのメッセージ♪
\(受験には使えない)訳うた/
夢でさえ
あなたは通って
こないのね。
人目を避けて
いるのでしょうか?
↓ 読み方(歴史的仮名遣いのルールはこちら)

↓ 文法説明と現代語訳

・「よる」は”寄る”が”夜”を導く音調的序詞。同音反復となっている。
・副助詞「さへ」は「~までも」と訳す添加。元々、漢字では「添へ」。
ここでは昼はもちろん、夜までも、の意味。
・「夢の通ひ路」は夢の中で男が女のもとに通ってくる道。
相手が自分のことを想って自分の夢に出ると信じられていた。
・「よく〔避く〕」は「よける・避ける」。
問4 以下の和歌の▢▢に当てはまる平仮名2文字は?
39 浅茅生の小野の篠原▢▢ぶれどあまりてなどか人の恋しき(参議等)
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正答:しの
解説:この歌も「③音調的序詞(同音反復による序詞)」です。
訳し方は「~の〇〇ではないが」や「~〇〇という言葉のように」など。
訳:茅萱が生えている小野の篠原、(その「しの」という言葉のように、)(これまで)忍んで〔≒我慢して隠して〕きたけれども、(今はもう隠しきれず、)度を越えて、どうして(こんなにも)あなたが恋しいのか。
\この歌のココがエモい♡/
「隠しきれないくらい、君が好き」という熱烈な恋の歌♪
\(受験には使えない)訳うた/
堪え忍び
隠して来たが
溢れ出る。
なぜこんなにも
君が恋しい。
↓ 読み方(歴史的仮名遣いのルールはこちら)

↓ 文法説明と現代語訳

・「しのぶれ」は「”しの”はら」が「”しの”ぶ」を導く音調的序詞。同音反復。