令和6年(2024年)共通テスト本試 国語第3問 古文『草縁集』「車中雪」問1の古文単語を10の古文単語帳で調査

共通テストを受けた皆さん、お疲れさまでした。

古文 問1の古文単語について、所感と調査結果をお伝えします。
今後の勉強方法の手助けとしていただければと存じます。

問1は例年各5点です。
3問だと15点分。高得点を狙うなら落としたくない設問ですね!

なお、こちらの記事を読みますと問1の答えもわかってしまうので、もし高1・2生などでまだ解いていない方は、先に解くことをオススメします。
(難易度が低めなので、非受験学年の方でも取り組みやすい問題ですよ)

河合塾の特集ページ https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/kyotsutest/24/

大学入試センター https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r6/

所感 傾向が変わった?!

センター試験と違って、共通テストになってからは「設問と選択肢を見ただけではわからない。本文を読まないと解けない」という傾向でしたが、
令和6年(2024年)本試では、設問と選択肢だけでほぼほぼわかってしまってびっくりしました。

他の年度だと、本文を読まないと1つに絞り切れないことがほとんどでした。

2023年には本文の後半(傍線部からかなり離れた個所)を読まないと確定できない難しい設問もあって、
問1を三完できるのはかなり古文ができる人だなあという印象を持っていたのですが、変わりましたね。

単語のレベルとひねり方

これまでの共通テストは、本文300語レベルの単語帳には載っていない語だったり、関連語扱いされがちな語が選ばれていたりして、
多読や500~600語レベルの単語帳に取り組んでもらう必要がある印象でした。

けれど、今回の問1は、300語レベルの単語帳のほとんどで「見出し語」になっている語だったのでびっくり!

しかも、訳語からの「ひねり」も少なめでした。
これまでは古文単語帳にある「訳語」と「正答の選択肢の語」がかなり離れていて、「語義・語感」をしっかり理解しておく必要があったのですが、今回は(まったく同じではないものの)わりと似た語で訳されていて、わかりやすいです!

かなり正答率が高かったと思います。

1問でも間違った方は、古文単語が今の自分の重要な課題だと思って集中して取り組みましょう!
他の受験生に差をつけられてしまうポイントですよ。

3つの語を10点の古文単語帳で調査

以下の10の古文単語帳に載っているか、確認してみました☆彡
(手元には20程の本を持っているのですが、切りよく10にしました。ご自身の単語帳が以下になければ、自分で確認してみましょうね!)

①『読んで見て覚える古文単語315』 桐原書店
(書名が少し変わって今は『読んで見て聞いて覚える古文単語315』ですね)
②『Key&Pointみるみる覚える古文単語300+敬語30』 いいずな書店
③『覚え方別攻略 古文単語340』 仲光雄,Z会
④『さくらさく古文単語』 浜島書店
⑤『Z会速読古文単語』 Z会出版
⑥『イラストとシーンでおぼえる Look@古文単語337 』京都書房
⑦『マドンナ古文単語230』Gakken
⑧『つながる・まとまる古文単語500PLUS』 いいずな書店
⑨『GROUP30で覚える古文単語600』 山村由美子,語学春秋社
⑩『古文単語ゴロゴプレミアム+』 ゴロゴネット編集部

ア あからさまにも (正答)少しの間も

・10点の本、全てに「あからさまなり」が載っていました。

・「少しの間も」という訳語の本はありませんが、「(ほんの)ちょっと(の間)・(ほんの)しばらく(の間)」という訳語が多かったです。ほぼ似た意味すね。

・⑩『古文単語ゴロゴプレミアム+』 は訳語が「①ついちょっと。仮に。②急に。たちまち」となっていたので、ゴロゴで覚えていた人はちょっと迷ったかもしれません。ただ、他の選択肢は意味がかけ離れているので、解けたでしょう。

イ とみのこと (正答)にわかに思いついたこと

・「思いついた」にあたる語は無いので、古文で省略されていることを文脈で補足した訳です。
 ただ、「とみ」の部分だけで即答できたと思います。

・古文単語長では「とみなり」で載っています。「とみに」という副詞の形も載せてくれている本があります。
 「とみ」という語幹だけになっていることで、「とみなり」の語の意味だとわからなかった受験生もいるかもしれませんね。

・正答の選択肢にある「にわか」の意味が分からなくて間違った受験生もいると思います。「にわか雨(急に激しく降って、すぐにやむ雨)」の「にわか」です。
 現代語の語彙力が足りない方は、語の意味の補足が充実している漢字検定の本を使ったり、漢文語彙の勉強をしたりすることをオススメします。
 漢文語彙だと、副詞「卒(にはかニ)」が「急に」の意味です。
 熟語「卒然・卒倒」の「卒」ですね。

・10点の本、全てに「とみなり」が載っていました。

・⑥『イラストとシーンでおぼえる Look@古文単語337 』は「見出し語」ではなく、「関連語」扱いでした。「うちつけなり」のページの下にチラッと書いてあるだけでした。

ウ かたちをかしげなる (正答)見た目が好ましい

・重要単語「かたち」と「をかし」が入っていますが、「かたち」で選べる設問でした。(「をかし」は多義語で意味の幅が大きく、文脈次第でいかようにも訳される語なので、今回はスルーします。)

・「かたち」の訳語は基本的に「容貌・顔立ち・顔かたち」でした。⑨『GROUP30で覚える古文単語600』には「容姿」の訳もあったので、これで学んだ人は「見た目」という訳語をより選びやすかったと思います。
 誤答「格好が場違いな」を選んでしまった人も少しいるかもしれません。
 「格好」は古語だと「かたち」ではなく「すがた」です。
 また、<古文常識>として、ここで童を貶すのは妙で、容姿を褒めることの方が多いです。のです。(かなり多読しないとわからないレベルの古文常識ですが)

・⑦『マドンナ古文単語230』以外には載っていました。
 マドンナは語義の説明が丁寧なので、初学者にはオススメですが少し不足することがありますね。

・⑥『イラストとシーンでおぼえる Look@古文単語337 』は「見出し語」ではなく、「関連語」扱いでした。「さまかふ」のページの説明内に含まれているだけでした。
 京都書房さんのこちらの本は「見出しキャッチ」「入試でのポイント」など他の本に無い良い点がたくさんあって好きなのですが、重要語扱いしている語のズレが結構あるのが気になります。

覚え方

この機会に、この3語のオススメの覚え方を紹介します。

あからさまなり <(ほんの)ちょっとの間>

【漢字と語源で覚える】
漢字は「離ら様なり」。
「離(あか)る」は「離(か)る」と同じく「離(はな)れる」。
「(その場所を)ちょっと離れる」という意味から、「ちょっとの間」になった。

【用法で慣れる】
「あからさまに(連用形)」は、「出いづ」 「立ち出づ」 「入いる」 「行く」 「参る」 「罷まかる」など、出入りや移動の動作を修飾することが多い。
本共通テストでも、「アあからさまにも渡り給はざりしを、」と、「行く」の意味の語にかかっている。
(参考)アの訳:少しの間も行きなさらなかったのに、

【余談1】
「あから目」は<❶わき見・ふと目をそらす>から、<❷浮気>の意味もあります。
ずっと私だけを見ていてよね!ってことですねw

【余談2】
現代語の「あからさま(明白・露骨)」は、近世以降の「明から様(はっきりしている)」のからきている。

 

とみなり・とみに <急に>

【漢字で覚える】
漢字は「頓なり・頓に」。
「頓死(とんし:死)」や「頓智(とんち:その場に応じて即座に出る知恵)」の「頓」の字ですね。

【余談】
同じく「と」から始まる語「とし(疾し)」も「早い・速い」という似た意味があります。
こちらも漢字で覚えましょう。「疾」は「疾風(しっぷう:速く吹く風)」の「疾」です。

 

かたち <容貌・容姿>

【漢字で覚える】
漢字は「形・容貌」。
なんと意味の「容貌」の字で、そのまま「かたち」と読みます。

【用法で慣れる】
男君が姫君を垣間見したときや、光源氏のような上級貴族の男性に対して、「かたち」を絶賛することが多いです。
「この世のものとは思えない」「絵以外では見たことがない」と褒めます。

 

以上。問1について深めてみました。
皆様の古典の勉強の糧になると幸いです。

個別指導もしておりますので、直接教わりたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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