令和6年(2024年)宮中歌会始 御製について
令和6年(2024年)宮中歌会始、お題は「和」です。
目次
御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)をちこちの旅路に会へる人びとの笑顔を見れば心和みぬ
をちこちの
旅路に会へる
人びとの
笑顔を見れば
心和(なご)みぬ
現代語訳(意訳)
日本全国各地への旅路にて会った人々の笑顔を見ると、心が和んだ。
古典文法・古文単語解説
をちこち
あちらこちら。ここかしこ。
※漢字「彼方此方」や「遠近」と書きます。
(会へ)る
完了の助動詞「り」の連体形。
(見れ)ば
~(する)と・~したところ。
順接の確定条件(偶然条件)
(和み)ぬ
完了の助動詞「ぬ」の終止形。
31音口語訳
あちこちの
旅先で会う
人々の
笑顔を見ると
心なごんだ。
※ほぼ同じですが、古文だとどうしてもピンとこない方のために作りました。
背景の解説 宮内庁より
天皇皇后両陛下には、皇太子同妃両殿下時代を含め、日本のほぼ全ての都道府県に行幸啓で訪れられています。(天皇陛下は四十七都道府県全て。 皇后陛下にはオンライン二県を含め四十五都道府県。) 令和になってからは、両陛下おそろいで、オンラインも含め二十八の都道府県に行幸啓になられています。
行幸啓で訪れられた際、両陛下には、その地の皆様に温かく迎えていただかれたことを嬉しくお思いになり、この御製では、天皇陛下が、各地でお会いになった方々の笑顔を御覧になってご自身のお心も和んでいらっしゃるお気持ちをお詠みになりました。
※冒頭の「~には」は、敬意を込めた表現です。
「~におかれましては」の意味で捉えるとわかりやすいです。
和歌を味わう
をちこち
昨年の歌会始にて皇嗣殿下がお詠みになった歌の冒頭と同じでした。
皇室の方々はあちらこちらにお出ましくださっていらっしゃいますね。
彼方此方(をちこち)を
友らと共に
行巡(ゆきめぐ)り
聞き初(そ)めしことに
喜びありぬ
こちらの歌については、詳しくはこちらのページに。
かなり余談ですが、この歌が「をちこち」で始まっているので……『千歳ヲチコチ』という平安時代の舞台としたマンガ、とっても面白くてオススメです。平安物が好きな方、ぜひ!
行幸啓
行幸啓(両陛下のお出まし)における国民の歓迎を喜んでいらっしゃる御歌ですね。
(私も機会があればぜひ、日の丸を振って奉迎したいです♪)
上皇后陛下が平成16年宮中歌会始にてお詠みになったこちらの歌と、同じような喜びの歌だと感じました。
幸(さき)くませ
真幸(まさき)くませと
人びとの
声渡りゆく
御幸(みゆき)の町に
意訳:「ご無事でいらっしゃってください。お健やかでいらっしゃってください。」と人々の声が一面に鳴り響く。あちこちの行幸啓の町で。
「幸くませ~」の歌の背景(宮内庁HPより)
陛下のご手術で明けたこの一年にも、両陛下は北海道から奄美大島にいたる沢山の旅をなさいました。
皇后陛下の御歌は、行幸啓の先々で陛下のご健康とお幸せを願う人々の声が、お車に添い町を渡っていく様をお詠みになったものです。
下の句「笑顔を見れば心和みぬ」
下の句については、多くの方が共感できると思います。
自分の身の回りの人の笑顔はもちろんのこと、
旅先で出会った一期一会の方の笑顔にも、
心がなごんで、穏やかな気持ちになることってありますよね!
私は以前、某コンビニの店長をやっていたのですが、
朝のラッシュ時に何百人ものお客さんに
全力の笑顔で「いってらっしゃいませ!」と
送り出すのが大好きでした。
お客さんが「眠いなー。会社に行くのだるいなー」と思っていそうな表情の時は特に、
気合を入れてニコニコな笑顔で、心をなごませて差し上げようとしていました☆
実は「ニコニコ」の「ニコ」って、漢字は「和」なんです。
(「にこやか」は「和やか」と書きます。)
今上陛下は国民への感謝の思いとともに、
《ニコニコ笑顔で、みんなの心がなごやかになりますように》という願いも込めて、お詠みになったのではないかなと感じました。
お題「和」について
いろんな読み方や熟語が考えられる「和」がお題でした。
天皇皇后両陛下、皇族方の御歌
天皇陛下と同じく「和(なご)む」で詠まれた方が多かったです。
和(なご)む(4名)、その他は、平和・十和田(地名)・和歌・小春日和・和風(やはかぜ)・仁和寺・和鳴(わめい)。
召人・選者
様々でした。
和む・大和(やまと)・和(こた)ふ・中和・和琴(わごん)・和(やは)らぐ・和(な)ぐ。
国民の詠進歌
見事に別の語のでした。(佳作は重複もありました)
和紙・大和(やまと)・昭和・和菓子屋・和だんす・和音・違和感・和服・平和・付和雷同
佳作は以下の通り。
和(あ)へる(2名)・和算・和む・和紙・人の和・仁和寺・三和土(たたき)・和太鼓・和音・和名(わめい)・不調和・和服・和(あ)へる・和訳・飽和
それぞれ、「どんな歌だろう?」と思った方は、ぜひ宮内庁のHPで見てみてください。
私は個人的には付和雷同や不調和、和訳、飽和など、和歌では見かけなさそうな語を使って読んでいる歌が気になりました!
後日、特に感動した歌をピックアップして、記事にしようと思います。
リンク
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