夏の歌~古今集・新古今集~

古今和歌集の約1,100首のうち、夏の詩は夏の巻34首だけ。
しかもそのうち、28首がほととぎすの歌なんです!

梅雨時にやってくる渡り鳥のほととぎす〔時鳥〕は、
夏の訪れの象徴でした。

ちなみに鳴き声はケキョケキョです。
ホーホケキョではないですよ。
(ホーホケキョは春を告げるウグイスです)

ほととぎす初声聞けばあぢきなく ぬし定まらぬ恋せらるはた 素性法師

わけもなく恋をはじめたくなったときに、おもしたいうた

ほととぎす
初声はつこえ聞けば
あぢきなく
ぬし定まらぬ
恋せらるはた
 素性そせい法師

訳:ホトトギス
初声はつこえ聞けば
わけもなく
誰かに恋を
せずにいられない

意訳:ほととぎすが初めて鳴く声を聞くと、わけもなく、誰とも相手の定まらない(のに)、恋をせずにはいられない。なんとまあ。

★「あじきなし」は現代語の「味気ない(面白くない・つまらない)」のもとの語ですが、ここでは本来の意味の「道理に合わない・理由がはっきりしない」です。
★最後の「はた」は副詞で感動の強調です。

五月待つ花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする 詠み人知らず

香りから誰かを思い浮かべたときに、おもしたいうた

五月さつき待つ
はなたちばな
をかげば
昔の人の
そでぞする
 詠み人知らず

訳:初夏に咲く
みかんの花の
香をかげば
思い出しちゃう
元カノのこと

意訳:(陰暦)五月を待って咲く橘の花の香りをかぐと、昔(親しんだ)人の袖の香りがすることだ。

※「橘(たちばな)」と「みかん」は正確には違いますが、同じ柑橘系で香も近いそうです。

★最後は大好きな歌をご紹介♪ 今どきだと、「この香水の香りはあの人の…」という感じでしょうか♪
『伊勢物語』第60段にこの歌の詳しいエピソードがあります。

 

橘のにほふあたりのうたたねは 夢も昔の袖の香ぞする 藤原俊成女

橘の
にほふあたりの
うたたねは
夢も昔の
そでぞする
  藤原俊成女としなりのむすめ

訳:元カレの
コロンが香る
うたた寝は
夢の中でも
アイツが側に

意訳:橘の花の香がかおるあたりでうたた寝をすると、夢の中でも昔の恋人の袖の香りがする。
※上記「五月待つ~」の歌を踏まえた本歌取りです。『新古今和歌集』に収録されています。

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