令和4年(2022年)宮中歌会始 御製などの現代語訳
令和4年(2022年)宮中歌会始、お題は「窓」です。
目次
御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)
世界との
往(ゆ)き来(き)難(がた)かる
世はつづき
窓開く日を
偏(ひとへ)に願ふ
現代語訳
世界の人々が往来することが難しいコロナ禍が続いている。
コロナが収束し、世界の人々が行き来できるようになる日が訪れることを、ひたすら願っている。
31音口語訳
コロナ禍で
海外渡航も
難しく
制限解除の
日をただ願う
※わかりやすさを優先して詠みましたが、「窓」を入れられず…駄作ですみません。
古典文法・古文単語解説
難かる
形容詞「難し」の連体形。難しい・容易でない。
世
ある時期・時節。世の中。今回はコロナ禍を指します。
窓
比喩として使われています。
偏へに
副詞。もっぱら・ひたすら・一途に。
和歌を味わう
天皇陛下は単にご自身が海外渡航しづらいことを嘆いていらっしゃるのではなく、世界中の人々がコロナ禍で移動もままならないことを気にかけていらっしゃるのだと思います。
人々の中には、コロナ禍によって会いたい家族と会えない人や、仕事が困難になっている方もいるでしょう。
また、窓が閉じている(移動が制限されている)この閉塞感からの解放を望んでいる人々の心に寄り添って、コロナの収束をただただ祈ってくださっているのだと拝察いたします。
背景の解説 宮内庁より
天皇陛下におかれましては、昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症の感染拡大の収束を願うお気持ちを歌に詠まれました。昨年は、人々の願いと、人々がこの試練を乗り越えようとする努力が実を結び、感染症が収束していくことを願われるお気持ちをお詠みになりました。今年は、このコロナ禍が収束したその先に、今大きく落ち込んでいる世界との人々の往来が再び盛んになる日の訪れを願われるお気持ちをお詠みになりました。
皇后陛下御歌(みうた)
新(あらた)しき
住まひとなれる
吹上(ふきあげ)の
窓から望む
大樹(たいじゅ)のみどり
現代語訳
新しい住居となった吹上御所(ごしょ)の窓から眺めることができる大きな木々の緑(がなんと素晴らしいのだろう)。
31音口語訳
吹上に
移り窓から
見る大樹
深きみどりに
御祖(みおや)を思う
※三句切れになっちゃいました。「御祖(みおや)」というのは、親や先祖を敬っていう語です。多くは母・祖母をさします。「上皇上皇后両陸下」だと長すぎるので言い換えたかったのですが、「先帝」だと上皇后陛下が含まれないので、御祖にしてみました。
31音口語訳の下手な読みっぷりと比べると、御歌の素晴らしさが際立ちますね。
古典文法・古文単語解説
新しき
形容詞「新たし」の連体形。古語は「あたらし」ではなく「あらたし」。
※「あたらし」だと「惜しい・残念だ」になります。
(なれ)る
完了・存続の助動詞「り」の連体形。
吹上
吹上御所のことを略しています。
和歌を味わう
句切れが無く、流れるように続く一首。しかも「みどり」と体言止めされていることで、感動が伝わるとともに、どれだけ青々として美しい様子なのか、想像力が搔き立てられます。
下記にありますように、吹上御所に元々住んでいらっしゃった上皇上皇后両陛下への感謝のお気持ちが込められていることが、「望む」「大樹」という大変ポジティブな語からも伝わります。
背景の解説 宮内庁より
天皇皇后両陛下並びに愛子内親王殿下ご一家には、昨年の九月、それまで長くお住まいになりました赤坂御所から上皇上皇后両陸下が一昨年まで長年お住まいになりました吹上御所に御移居になりました。この御歌は、吹上御所に新たに御移居をされた皇后陛下が、上皇上皇后両陛下への感謝のお気持ちを新たになさりながら、大きな木々の緑深い御所からの眺めをお詠みになったものです。
※冒頭の「~には」は、敬意を込めた表現です。
「~におかれましては」の意味で捉えるとわかりやすいです。