『伊勢物語』(筒井筒)風吹けば沖つ白波たつた山 夜半にや君がひとり越ゆらむ

一人旅や出張、単身赴任を見送る人へ

風吹けば
沖つ白波
たつたやま
夜半よわにや君が
ひとり越ゆら
 詠み人知らず

現代語訳

風が吹くと、沖で波が白く立つ(という名を持つ山であり、”白波”とも言われる山賊が出る)竜田山を、この夜中にあなたが一人で越えているのだろうか。(無事だと良いけれども)。

古典文法・古文単語解説

たつた山
大和国の山。今の奈良県生駒郡三郷町。
大和川北岸・生駒山南端の山々の総称。
「立田山」とも書く。

夜半
夜中。夜更け。

(夜半に)や
疑問の係助詞。

(越ゆ)らむ
現在推量の助動詞。

31音(おん)口語訳

山賊が
出る竜田山
真夜中に
一人で越える
君よ ご無事で

和歌を味わう

『伊勢物語』筒井筒の話の中盤に出てくる歌です。

幼馴染のカップルがいたのですが、女の両親が亡くなって経済的に厳しくなったために、男は竜田山を越えた所にいる女のもとに通うようになりました。

女が嫉妬心などを見せずに、快く男を送り出したので、男は「浮気してるのか?」と疑います。
そして男がこっそりと女の様子を確認しにいったところ、この和歌を詠んだのです。

自分の無事を祈ってくれていた女への愛情が再び増して、男は竜田山の向こうの女には会いに行かなくなりました。

素晴らしい和歌を詠んだ人が幸せになる「歌徳」話の1つです☆彡

 

ちなみに和歌の直前に「この女、いとよう化粧じて、うち眺めて、」とあります。
訳すと「この女、とてもしっかりと化粧をして、もの思いにふけって、」となります。

なぜ化粧をしたと思います?

特に正解は無いのですが、私の想像だと、「あの人を山賊から守って下さい」と神仏に祈るような気持ちで和歌を詠んだと思うので、その神仏に向き合うために見目を整えたのではないでしょうか。

(他の男がいたのではとか、
 男が見に来ることを予想してたのではとか、
 そんな現代的な妄想をしてしまう気持ちもわかりますw)

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

今日も一日、あなたがイキイキと生きられることをお祈り申し上げます✨

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