令和6年(2024年)宮中歌会始 素敵な歌五選~皇族・召人の歌編~

令和6年(2024年)宮中歌会始、お題は「和」でございました。

御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)についてのページはこちら。
素敵な歌五選~詠進歌編~はこちら。

不遜ながら、「この歌、素敵!」と感じた歌をセレクトさせていただきました。

1.和歌♪ 幾年の難き時代を乗り越えて和歌のことばは我に響きぬ

幾年(いくとせ)
(かた)き時代を
乗り越えて
和歌のことばは
我に響きぬ

敬宮 愛子内親王殿下の御歌です。
「和歌」をテーマに詠んでくださっていて、そのことにまず大興奮しました!

本当に、戦乱の時代もあったのに千年以上も前のものも含めて和歌が残っていて、私たちの琴線に触れる言葉と出会えるのは、ご先祖様たちが一生懸命、書き写して大事に残してくださったからだと思います!
まさにミラクル!有り難きことです。

現代語訳(意訳)

長い年数の困難な時代を乗り越えて(受け継がれ)、和歌の言葉が私に響いた。

古典文法・古文単語解説

(響き)ぬ
完了の助動詞「ぬ」の終止形。

背景の解説 宮内庁より

 愛子内親王殿下には、令和二年四月に学習院大学文学部の日本語日本文学科に御進学になり、昨年四月に四年生に進級されました。このお歌は、大学の授業で学ばれた中古・中世に詠まれた和歌が、戦乱の世も越え、およそ千年の時を経て、現代に受け継がれていることに感銘を受けられたお気持ちをお詠みになったものです。

2.「きばいやんせ」 鹿児島に集ふ選手へ子らの送る熱きエールに場は和みたり

鹿児島に
(つど)ふ選手へ
子らの送る
熱きエールに
場は和(なご)みたり

皇嗣妃殿下の御歌です。
下記の解説にありますように、「子らの熱きエール」は「きばいやんせ」(鹿児島の言葉でいう「がんばって」)と都道府県名を呼んでいたそうです。

私の生まれ福岡県大牟田市だったら、「がんばらんね」かな?!なんて想像しました。
方言ネタには心動かされます♡

背景の解説 宮内庁より

 秋篠宮皇嗣同妃両殿下は、昨年十月に「特別全国障害者スポーツ大会」ご臨席のために鹿児島県をお訪ねになりました。 秋晴れの下におこなわれた開会式では、スタジアムの席から地元の子どもたちが、自分たちの前を通る選手団各々に「きばいやんせ」(鹿児島の言葉でいう「がんばって」)と都道府県名を呼び、色鮮やかなスティックバルーンを鳴らす音や動きで、熱いエールを送りました。皇嗣妃殿下は、そのような子どもたちの応援で会場の雰囲気が和んだことを思い出されながら、この歌をお詠みになりました。

3.神様は風 道真公遷られたまふ御祭りに頬にふはりと和風の吹く

道真公(みちざねこう)
(うつ)られたまふ
御祭りに
頬にふはりと
和風(やはかぜ)の吹く

彬子(あきこ)女王殿下の御歌です。
下の解説を読むと、とっても神秘的です!

なぜ「神様は風」なのかよくわかりません。どなたかご存じでしたら教えてください。
私の勝手な予想ですが、「飛梅伝説」の梅を運んだのが神様かも…なんて思いました。

「飛梅伝説」の説明は太宰府天満宮のHPから引用させていただきます。

菅原道真公は、京都から大宰府へいわれのない罪で左遷される折、自邸の梅の木に「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と歌で別れを告げられました。

道真公を慕った梅の木は、一夜にして大宰府まで飛んできたと伝えられます。

歌の訳:(私が京都のここを去っても、春の)東風が吹いたら、(風に託して)その香を(太宰府にいる私のもとへ)送ってよこしなさい、梅の花よ。主人がいなくなったからといって、(花を咲かせる)春を忘れてはいけないよ。

背景の解説 宮内庁より

 昨年の五月、太宰府天満宮の仮殿遷座祭に参列された折、神様が目の前をお通りになる直前、やわらかい風がふわりと吹いたのをお感じになりました。
 先代の宮司様がよく、「神様は風だよ」と言われていたことを体感され、有り難くお思いになったことをお詠みになったお歌です。

4.音が膨らむ 仁和寺のお堂にひびく声明の音ふくらみて我をつつみぬ

仁和寺(にんなじ)
お堂にひびく
声明(しょうみょう)
(おと)ふくらみて
我をつつみぬ

憲仁親王妃久子殿下の御歌です。

「声明」の振り仮名は歴史的仮名遣いで「しやうみやう」でした。
※歴史的仮名遣いの読み方のルールを知りたい方はこちら

さて、「声明」とは、仏教用語です。
仏教の儀式や法会の際に僧侶が曲節を付けて経文を朗唱する声楽のこと。

その音がふくらんで私を包んだというのは、
とても素敵な、詩的表現だと感じました。

調べ(リズム)もとても心地よくて、何度も朗詠したくなる御歌です。

古典文法・古文単語解説


耳に聞こえてくる音響一般。お経を朗唱する声も含まれています。
古文を現代語訳するとき、「音」を「声」と訳したり、「声」を「音」と訳したりします。
例)「祇園精舎の鐘の声」の「声」は「音」です。

(つつみ)ぬ
完了の助動詞「ぬ」の終止形。

背景の解説 宮内庁より

 一人でいろいろなものを背負って走り続けてきたご友人が、その重さと辛さについてぽつりぽつりと打ち明けてくれる横顔をご覧になりながら「少しでもその荷を軽くする手助けが私にできたらいいな」とお思いになった夜のことをお詠みになったお歌です。

5.歌会 歌木簡かかげ三十一文字をよむ温き響きに座は和みたり

歌木簡(うたもっかん)
かかげ三十一文字(みそひともじ)をよむ
(ぬく)き響きに
座は和(なご)みたり

現代語訳(意訳)

歌を書いた木簡を高く持って、五七五七七の和歌を朗詠する温かい響きに、会は穏やかな空気になった。

古典文法・古文単語解説

木簡(もっかん)
古代、文字を書き記すために用いられた木の札。

三十一文字(みそひともじ)
〔一首の形式が五,七,五,七,七で合計三一文字であることから〕和歌・短歌。

(和み)たり
存続・完了の助動詞「たり」の終止形。

和歌を味わう

召人(めしうど)栄原永遠男氏の御歌です。
召人とは、 天皇から特に召されて短歌を詠む者です。(宮内庁HPにある用語の説明より)

この栄原氏について調べたら、日本古代史学者で、奈良時代の本を多く出していらっしゃって、なんと木簡学会会長!

この歌の「座」はおそらく、奈良時代の歌会をイメージしていらっしゃるのだと思われます。
元号「令和」の由来となった万葉集の「梅花(ばいか)の宴」はまさに奈良時代の歌会です!

(実は、「昔の真似をして、木簡を使った歌会をなさったときの思い出を詠まれた可能性もあるかな」なんて想像もしていたのですが、きっと違いますね!)

久しぶりに令和の由来の文章を読み返してみましたら、「和(やはらギ)」という語が!
なんとエモい~!もののあはれを感じます♡

時に、初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす

訳:時は、初春のめでたい月で、空気は清らかで風はおだやかで、梅は鏡の前の美女がおしろいを塗るように白く花開き、蘭は衣のつけた匂い袋のように薫らせている。

歌の調べも素敵です。
二句目・三句目をこんな風にセットで朗詠しちゃう方法もあるんだなと勉強になりました。

まとめ

以上!
皆さんはお好きな和歌はありましたか?

私は和歌は「もののあはれ(人の情)」への理解を深めさせてくれるものだと思っています♪
皆さまの感性を豊かにするものの1つとして、味わっていただけますと幸いです。

御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)についてのページはこちら。

 

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