菊の歌:すべらぎの万代までにまさりぐさ たまひし種を植ゑし菊なり
その由来となりました和歌を現代語訳してみます。
※他の方の訳を見かけたことが無いので、もしより良い解釈を知っている方がいらっしゃいましたら、コメント欄にて教えていただけますと幸いです。
すべらぎの
万代(よろづよ)までに
まさりぐさ
たまひし種を
植ゑし菊なり
現代語訳
天皇が永久にまさる(=繁栄する)ことを祈ります。
この(菊合わせで)まさっている菊は、天皇からいただいた種を植え(て育っ)た菊である。
古典文法・古文単語解説
すべらき
天皇。「すめろき・すめろぎ・すめらき・すめらぎ・すめらみこと」などの言い方もあります。
万代
いつまでも続く世・永久。
まさりぐさ
「勝り草」とも「優り草」とも書きます。
菊の古称で、歌に使われる「雅語(がご)」です。
「(天皇の永久に)まさる」と「(この)まさり草は」の掛詞だと思われます。
たまひ
「お与えになる・くださる」という尊敬語の連用形。
(またひ)し
過去の助動詞「き」の連体形。
植ゑ
「植える」という意味のワ行下二段活用の動詞「植う」の連用形。
(植ゑ)し
過去の助動詞「き」の連体形。
なり
断定の助動詞「なり」の終止形。
31音(おん)口語訳
下賜(かし)された
種から出た菊
勝(まさ)るように
優(まさ)るよ 永久(とわ)に
天皇の世は
和歌を味わう
寛平(かんぴょう)の菊合わせの歌に詠まれた歌のようです。
寛平は平安時代の889年から898年まで。
宇多(うだ)天皇、醍醐(だいご)天皇の御代です。
実際に種が誰から誰に下賜されたのかは不明なので、
背景事情をご存じの方がいらっしゃったら教えてください♪
「菊合わせ」は「物合わせ」の一種。
左右に分かれて、両方からそれぞれ菊の花を出し、歌をつけて、優劣を競う遊びです。
「物合わせ」と言えば、私は「根合わせ」が印象的です。
端午の節句に、左右に分かれて菖蒲(しょうぶ)の根の長さを比べ合わせた遊技なんです。
より長い根っこのを用意できた方が勝ちって、雅な世界とのギャップがあって面白いですよねw
「菊合わせ」の中で詠まれた歌なので、「まさり」は菊の優劣を指しているかと思います。
天皇の繁栄を言祝(ことほ)ぐ(=言葉で祝福し、幸運を祈る)ことと、上手く掛けていますね!