令和5年(2023年)宮中歌会始 御製・御歌について

令和5年(2023年)宮中歌会始、お題は「友」です。

御製(ぎょせい/天皇陛下の御歌)コロナ禍に友と楽器を奏でうる喜び語る生徒らの笑み

コロナ禍(か)
友と楽器を
奏でうる
喜び語る
生徒らの笑み

和歌を味わう

天皇陛下はオーケストラでビオラを演奏されることもありますので、
演奏者で集まって呼吸を合わせて演奏することを心から喜びと感じていらっしゃるのではないでしょうか。

コロナ禍になって、中高生らのオーケストラ部なども、集まって一緒に奏でることができない時期もありました。
(リモート演奏も話題になりましたね。インターネットの「音の遅れ」があって大変だったようです)

いまは制限がありつつも、友と一緒に演奏できるようになったことを、
本当に良かった
思っていらっしゃるのだと思います。

 

さて、正直なところ、「コロナ禍に」からはじまったことに驚きました。
和歌を詠む際、初句(最初の五音)から考える方が多いです。

つまり、絶対にコロナ禍のことをテーマにして詠もうと決めて、詠作されたのではないでしょうか。

お題は「友」だったので、天皇陛下ご自身の友に関することを詠むこともできたはずですが、
やはり、日本国民統合の象徴(日本国憲法第1条)でいらっしゃることなどを考えて、いまの国民にとって一番の苦労の根源であるコロナ禍をテーマにされたのでしょう。

人と人が直接会って何かをすることの喜び。
こんな当たり前のことへの制限が完全になくなり、国民みんなが多くの喜びを得られる日本になることを、
祈ってくださっているのだと拝察いたします。

お題「友」について

今回のお題を初めて知った時、珍しいなと感じました。

過去のお題は、お題の字を含めた熟語がもっと多く存在します。
例えば令和三年の「実」だと、「果実・実験・真実・口実・切実」など、さまざまあります。

一方、今回の「友」だと「友達・旧友・学友・悪友」など。
意味も全て「友」です。
テーマの方向性が限られてしまって、似たような和歌が集まってしまうじゃないかと勝手に心配しました。
(一方、似たような和歌が集まるからこそ、選ばれた歌は本当に良いものだろうなという期待も高まりました💕)

しかし、今回の御製を拝読して納得しました。
コロナ禍で孤独を感じる国民が増えてしまったことを心配して下さって、「友」というものの素晴らしさを見つめ直す機会を作ろうとしてくださったのではないでしょうか。
そういった天皇陛下の慈しみの心を感じました。

背景の解説 宮内庁より

 天皇皇后両陛下には、令和三年十月三十日、和歌山県で行われた、第三十六回国民文化祭・わかやま2021及び第二十一回全国障害者芸術・文化祭わかやま大会に、オンラインで御臨席になりました。
その際、国民文化祭のイベントの一つである「吹奏楽の祭典」において、演奏者の高校生と御交流になる中で、吹奏楽部の生徒さん達が、新型コロナウイルス感染症対策として、生徒同士の距離を空けたり、パートごとに分かれて練習をしたり、楽器の用意や片付けの際に部室へ入る人数を絞ったりしながら練習を続けてきた話をお聞きになりました。
この御製は、生徒さん達が、様々な制約がある中でも、創意工夫をこらしながら楽器の演奏を続け、 コロナ禍でも友達と一緒に演奏できる喜びを語った姿をうれしく思われるとともに、人々に早く日常の生活が戻ることを願われるお気持ちをお詠みになったものです。

※冒頭の「~には」は、敬意を込めた表現です。
「~におかれましては」の意味で捉えるとわかりやすいです。

皇后陛下御歌(みうた)皇室に君と歩みし半生を見守りくれし親しき友ら

皇室に
(きみ)と歩みし
半生(はんせい)
見守りくれし
親しき友ら

現代語訳(意訳)

皇室に入って天皇陛下と歩んできた私の半生を、見守ってくれてきた親しい友人たちよ。心から感謝しています。

古典文法・古文単語解説


天皇。
※文脈によって、「あなた」や「主君」などにもなる語ですが、皇后陛下が一緒に歩んで来られたのはもちろん天皇陛下です。

(歩み)し
過去の助動詞「き」の連体形。

半生 ※現代語ですが、念のため
一生の半分。
その人が、その時まで生きてきた軌跡。

(見守りくれ)し
過去の助動詞「き」の連体形。

和歌を味わう

民間から皇室に入る、しかも皇太子殿下と結婚するというのは、どれほど重く大変なことか、想像が尽きません。
(実際に、皇后陛下も上皇后陛下も、一度はプロポーズを断っていらっしゃいます。責任が重すぎて、誰だって、辞退したくなりそうですよね…)

そして勇気をもって皇室に入って下さったのに、マスコミによる酷いバッシングで、大変な苦労を経験してこられました。(本当に、国民として、申し訳ないことです…)

けれど、こうやって今は体調も以前より回復されてきました。
どんなにおつらい状況でも、常に味方になって見守り続けてくれたご友人の存在が、生きる支えのお一つだったのだろうなと想像しております。

背景の解説 宮内庁より

 天皇皇后両陛下がご成婚になりましたのは、平成五年六月九日のことでございました。皇后陛下には、昨年令和四年十二月のお誕生日に、皇室にお入りになってからの時の長さがご成婚前までと同じ位になりましたことを感慨深くお思いになり、この間多くの方に支えられてきたことへの感謝のお気持ちを、お誕生日をお迎えになる「ご感想」の中でお表しになりました。
この御歌は、皇后陛下が、これまでの日々を温かく見守ってこられたご友人達への感謝のお気持ちをお詠みになったものです。

上記にあります「昨年令和四年十二月のお誕生」の記者会見からも、引用しておきます。

 今回、50代最後の誕生日を迎えるに当たり振り返ってみますと、私が、当時の皇太子殿下との結婚により皇室に入りましたのが平成5年6月9日、ちょうど29歳半の時でした。本日の誕生日で、その時からちょうど29年半になります。いつの間にか人生のちょうど半分ほどを皇室で過ごしてきたことに、感慨を覚えております。
これまでの人生を思い返してみますと、29歳半までの前半にも、また、皇室に入りましてからの後半にも、本当に様々なことがあり、たくさんの喜びの時とともに、ときには悲しみの時も経ながら歩んできたことを感じます。そして、上皇上皇后両陛下のお導きをいただきながら、どのようなときにも、天皇陛下を始め、多くの方々に私の歩みの一歩一歩を支え、見守っていただいてきたことを思い、心から感謝したいと思います。

「皇后陛下のお誕生日に際しての医師団見解」も掲載されていました。
よろしければお読みください。
皇后陛下が大変なご体調ながらも、精一杯、国民の為に活動して下さっていることが伝わってきました。

皇后陛下のお誕生日に際しての医師団見解

その他、令和五年の歌会始の和歌

素敵な歌五選~皇族・選者の歌編~
素敵な歌五選~詠進歌編~についてのページはこちら。

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