上皇陛下の御製(和歌)戦ひにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ
パラオとご縁のある方とお会いするので、上皇陛下がパラオに訪問されてお詠みになった歌について記載します。
戦ひに
あまたの人の
失せしとふ
島緑にて
海に横たふ
現代語訳
戦争でたくさんの人が亡くなったという(パラオのペリリュー)島は緑ゆたかに海に横たわっている。
古典文法・古文単語解説
あまた
たくさん
失せ
「失す」の連用形。「うす(失す)」は「亡くなる」。
(失せ)し
過去の助動詞「き」の連体形
とふ
~という。
上代語。格助詞「と」+「言ふ」のチョウ「といふ」の変化した形。
なお、中古文では「てふ<読み:チョウ>」となる。
「恋すてふ(=恋をしているという)」 「夢てふもの(=夢というもの)」など用例が多い。
(失せ)し
過去の助動詞「き」の連体形
31音(おん)口語訳
戦争で
多くの人が
亡くなった
パラオの島は
緑でそこに
和歌を味わう
平成二十八年(2016年)歌会始でご発表になった歌です。
お題は「人」でした。
宮内庁HPに下記の説明があります。
天皇皇后両陛下は、昨年四月、慰霊のためパラオ共和国を訪問された。この御製は、先の戦争の激戦地ペリリュー島で西太平洋戦没者の陣にご供花になり、引き続いて、そのそばから見えるアンガウル島に向かって拝礼された時のことをお詠みになったもの。
平成二十七年(2015年)は戦後七十年の節目にあたり、天皇皇后両陛下は国内外へ慰霊の旅に行かれました。
ご英霊の皆さまは喜んでくださったことだと存じます。
私もグアム・サイパンには慰霊の旅に行ったことがあります。
祖父がかつてパプアニューギニアで戦って奇跡的に生き残ったと聞いているので、南の島での戦いについて見聞きすると、「祖父や祖父の仲間が戦ったんだ」という想いが募ります。
日本とパラオの関係についてご存じない方は、
在パラオ日本国大使館のHPなどをご覧ください。
ちなみに友人がパラオに訪れたこともHPに載っていました。
さて、下の句の「島緑にて海に横たふ」というのはとても静かで穏やかな印象を受けます。
戦時は本当に激戦で、「緑」ではなく焼けて禿山になった箇所も多かったのではないでしょうか。
「横たふ」という言葉には、収容しきれていないご遺骨が眠っていることも意味しているように感じます。
手を合わせたくなる歌です。
今日も一日、あなたがイキイキと生きられることをお祈り申し上げます✨