筑波嶺の峰より落つる男女川 恋ぞ積もりて淵となりぬる(陽成院)
百人一首13番
つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
決まり字:つく
筑波嶺の
峰より落つる
男女川
恋ぞ積もりて
淵となりぬる
峰より落つる
男女川
恋ぞ積もりて
淵となりぬる
訳うた:男女川
下るにつれて
この恋も
積もり積もって
もう溺れそう
下るにつれて
この恋も
積もり積もって
もう溺れそう
現代語訳
筑波山の
峰から流れ落ちる
男女川の水が、
浅瀬から深くよどんだ淵になるように、私の恋も積もり積もって、
深い淵となってしまいました。

古典文法・古文単語解説
- 筑波嶺
筑波山のこと。「嶺」は山の高いところ。 - 男女川
筑波山から流れる川。男女が一緒になることを思わせる名でもある。 - 恋ぞ積もりて
「ぞ」は強意の係助詞。恋が積もったことを強く表す。 - 淵となりぬる
「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。恋が深い淵になってしまった、という意味。
作者・陽成院について
陽成院は、第57代天皇です。退位後も、歌人として百人一首に名を残しています。
男女川の流れが浅瀬から深い淵へ変わる様子に、募っていく恋心を重ねた歌です。自然の景色と人の感情が一つにつながっています。
和歌を味わう
恋が深くなって、もう自分では止められないと感じたことはありますか?
筑波山から流れ落ちる男女川は、はじめは細い流れでも、下るにつれて水を集め、やがて深い淵になります。
作者は、その川の変化を恋心に重ねています。恋もまた、少しずつ積もっていくうちに、気づけば簡単には抜け出せないほど深くなってしまうのでしょう。
「男女川」という名前そのものにも、男女の恋を思わせる響きがあります。山の水が深い淵になる自然の動きが、そのまま恋の深まりとして感じられる一首です。
訳うたでは、深くなった恋を「もう溺れそう」と置き換えています。水の流れと恋の勢いを重ねると、募る思いの大きさが見えてきます。
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