あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む(柿本人麻呂)

百人一首3番
あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
決まり字:あし

あしびきの
山鳥やまどり
しだり
ながながし
ひとりかも

訳うた:独り寝の
    夜は長いなぁ。
    山に住む
    鳥の尻尾の
    ように長いよ。

現代語訳

(「あしびきの」は枕詞で訳さない)
(つがいでも別々に寝るという)山鳥の尻尾の、
(その)長く垂れ下がった尾のように、
長い長い夜を、
私は独りで(明けるのを待ちながら)寝床に横たわるのだろうか。

古典文法・古文単語解説

  • あしびきの
    「山」にかかる枕詞です。ここでは「山鳥」を導いています。
    (山を登ると脚が疲れ、杖で前に進みつつ、脚を引きずるイメージですかね?!)
  • 山鳥の尾のしだり尾の
    「しり尾」は、長く垂れ下がった尾のこと。
    「しる」は(細長いものが)垂れ下がる・垂れ落ちることを指します。
    ざくら」や「れ柳」にも残っている語ですね。
    上の句全体が、次の「ながながし夜」を導く壮大な序詞になっています。
  • ながながし夜
    「長々し」は、とても長いという意味です。
    山鳥の尾の長さと、ひとりで過ごす夜の長さが重ねられています。
  • (ひとり)かも(寝)む
    「か」は疑問の係助詞、「も」は詠嘆の終助詞、「む」は推量の助動詞です。
    「も」は特に訳しません。
  • (ひとりかも)寝(む)
      類語との比較で理解しましょう。
    「寝(ぬ)」は、寝所に入り寝支度をして横になること。
    「眠る・睡る(ねぶる)」は、寝所でない所で座ったままなどの姿勢で眠ること。
    「臥す(ふす)」は、ただ体を横にすること。
    ここはそのまま「寝る」を訳されることが多い箇所ですが、寝たら朝まで一瞬のはずです。「長々し」なので、なかなか寝付けなくて「(明けるのを待ちながら)寝床に横たわる」という解釈の方が合っていると私は思います。

作者・柿本人麻呂について

柿本人麻呂は、飛鳥時代から奈良時代初めごろに活躍した歌人です。
『万葉集』を代表する歌人の一人で、のちに「歌聖」とも呼ばれました。

宮廷に関わる歌を多く残した人物として知られています。

和歌を味わう

和歌のソムリエ
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ひとりで過ごす夜って、なんだか長く感じるよね

この歌は、恋しい人と一緒にいられない夜の長さと寂しさを詠んだ歌です。

山鳥は、昼はつがいでいても、夜は別々に寝る鳥だと考えられていました。
そのため、和歌では「ひとり寝」の寂しさを表すものとして使われます。
(ひょっとしたら、当時の人は「今は妻とケンカ中で”山鳥”だよ~」みたいに”山鳥”という言葉を使ってたのかもしれないですね)

この歌で印象的なのは、「長い」という感覚を、山鳥の尾という姿で見せているところです。

恋しい人に会えない夜は、時計で測る時間以上に長く感じられるものです。
夜が明けるまでの静けさ、心細さ、誰かを思う気持ち。
そのすべてを、山鳥の尾の長さに重ねているのが、この歌の美しさです。

千年以上前の歌であっても、「ひとりの夜は長い」という気持ちは、今の私たちにもよくわかりますね。

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