令和7年(2025年)宮中歌会始 素敵な歌三選~召人・選者の歌編~
令和7年(2025年)宮中歌会始、お題は「夢」です。
※「夢」に関する過去の御製のご紹介ページもこちらにあります。
不遜ながら、「この歌、素敵!」と感じた歌をセレクトさせていただきました。
目次
1.一人寝の夜の寝覚のさびしさにみじかき夢のかけらを拾ふ
一人寝の
夜の寝覚の
さびしさに
みじかき夢の
かけらを拾ふ
召人三田村雅子さんの歌です。
召人(めしうど)とは「天皇から特に召されて短歌を詠む者」です。
宮内庁HPに用語の説明ページがありますよ。
三田村雅子さんは『源氏物語』関連の本を多く出されている国文学者の先生です。
昨年の大河ドラマ「光る君へ」の名残を味わえる歌を詠んでくださいました。
そして「一人寝」といえば、通い婚で知られる平安時代♪
「小倉百人一首」には「ひとり寝」が三首に入っています。
3.あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む(柿本人麻呂)
53.嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る(右大将道綱母)
91.きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしきひとりかも寝む(後京極摂政前太政大臣)
百人一首の訳はこちらのページ。
さらに「夜の寝覚」といえば、少女時代に『源氏物語』のことが大好きだったことを『更級日記』に書いた菅原孝標女の著作だと伝えられる作品に『夜の寝覚』があります。
『夜の寝覚』は「夢」の予言が重要な鍵となっている物語です!
現代語訳(意訳)
(あなたが来てくれず)一人寝をしている夜に、ふと目覚めてしまい、感じた寂しさ(をごまかすため)に、(さきほど見たあなたとの逢瀬の)短い夢の断片を拾う。
2.さあ夢を語りませうと海見ゆる席に「予約」のプレート置かる
さあ夢を
語りませうと
海見ゆる
席に「予約」の
プレート置かる
選者 栗木京子さんの歌です。
レストランを予約しておいて、案内された席に「予約」のプレートがあると、あなたはどんな気持ちになりますか?
私は「お待ちしておりました!」と歓迎されているような気がして嬉しくなります♪
しかも、海が見える席って、特等席な感じがするので、ワクワクします☆彡
そんなワクワクな環境で「さあ夢を語りましょう!」って、なんて素敵な時間なんだろう!とうっとりします。
大人になると、「夢を聞かれても、困るよ。。。」って人も多いかもしれませんが、「どこどこに旅行に行きたい」とか「こんなことを体験してみたい」といった、ちょっとしたやりたいことを「夢」と言ってもいいと思うんです。
さざ波が聞こえる場所だったら、それに癒されながら、ゆったりと思いを巡らせておしゃべりできたら幸せですね!
3.あけがたの汀のみづをあなうらに踏みつついまだ夢のなかなる
あけがたの
汀のみづを
あなうらに
踏みつついまだ
夢のなかなる
選者 大辻隆弘さんの歌です。
現代語訳(意訳)
明け方の波打ち際の海水を足裏に踏んで感じ続ける(ような気がして)まだ夢の中にいる。
古典文法・古文単語解説
汀(みぎは)
〔「水際」の意〕〔川・海・湖の〕波が打ち寄せて来る、常に濡れた一帯の砂地。渚。
あなうら
足の裏。
(なか)なる
存在の助動詞「なり」の連体形。~にいる。
和歌を味わう
「夢」というものを上手く象徴した歌だと感じました。
上記の訳では(ような気がして)という補足をしてみました。
「あけがたに汀のみづをあなうらに踏み」というのは現実ではなく、夢の中の出来事だと感じたからです。
お布団の中で、目が覚めかけているけれども、まだ半分、意識が夢の中にある状態。
そんな同時並行を表す「つつ」だと解釈しました。
初句が「明け方に」ではなく「あけがたの」となっており、「みずの」「夢の」と連なっているのは一首の流れを良くしていると感じました。
まとめ
以上!
皆さんはお好きな和歌はありましたか?
私は和歌は「もののあはれ(人の情)」への理解を深めさせてくれるものだと思っています♪
皆さまの感性を豊かにするものの1つとして、味わっていただけますと幸いです。