君がため惜しからざりし命さへ 長くもがなと思ひけるかな(藤原義孝)
百人一首50番
きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
決まり字:きみがためを
君がため
惜しからざりし
命さへ
長くもがなと
思ひけるかな
惜しからざりし
命さへ
長くもがなと
思ひけるかな
訳うた:君のため
惜しくなかった
命でも、
長くありたい。
君といるため。
惜しくなかった
命でも、
長くありたい。
君といるため。
現代語訳
あなたに(お逢いする)ためなら、
(以前は死んでも)惜しくないと思っていた
命まで、(お逢いした今は、これからもずっとお逢いできるように)
長くあってほしいと
思うようになったことよ。

古典文法・古文単語解説
- 君がため
あなたのために。ここではあなたに逢うために、の意。 - 惜しからざりし
惜しくはないと思っていた。「ざり」は打消、「し」は過去の助動詞「き」の連体形。 - 命さへ
「さへ」は添加の副助詞で、命までも、の意。 - 長くもがな
長くあってほしい。「もがな」は願望を表す終助詞。
作者・藤原義孝について
藤原義孝は平安時代中期の貴族・歌人です。
百人一首45番の藤原伊尹の子で、若くして病で亡くなりました。
この歌は『後拾遺和歌集』恋の部に収められています。
恋しい人と逢瀬を遂げた後、相手のためなら惜しくなかった命を、今度は長く保ちたいと願う心を詠みます。
和歌を味わう
和歌のソムリエ
あなたのためなら惜しくなかった命を、今は長く保ちたいと思う。
恋しい人に逢うためなら、命さえ惜しくないと思っていた。ところが逢瀬を遂げた今、その命を長く保ちたいと願うようになります。
「命さへ」の「さへ」は、命までも、という付け加えです。以前は捨ててもよいと思ったものが、逢えた後には大切なものへ変わった。その心の転じ方が歌の中心です。
「もがな」は願望を表す終助詞で、ただ長生きしたいのではなく、相手とこれからも逢い続けたい願いを含みます。「思ひけるかな」には、その変化に今気づいた詠嘆が響きます。
語呂とイラストで覚える
※語呂とイラストは歌の意味とは無関係です。
関連リンク
- 前の歌:49番「御垣守衛士のたく火の夜は燃え」大中臣能宣朝臣
- 次の歌:51番「かくとだにえやは伊吹のさしも草」藤原実方朝臣
- 逢った後に恋心が深まったと気づく歌:43番「逢ひ見てののちの心にくらぶれば」権中納言敦忠
- この世を去る前にもう一度逢いたい歌:56番「あらざらむこの世のほかの思ひ出に」和泉式部
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