長らへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき(藤原清輔朝臣)
百人一首84番
ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
決まり字:ながら
長らへば
またこのごろや
しのばれむ
憂しと見し世ぞ
今は恋しき
またこのごろや
しのばれむ
憂しと見し世ぞ
今は恋しき
訳うた:未来には
また懐かしく
思うかな?!
苦悩の過去も
今は恋しい。
また懐かしく
思うかな?!
苦悩の過去も
今は恋しい。
現代語訳
もし生き長らえるならば、
また(つらい)今のことが
なつかしく思い出されるのであろうか。
つらいと思った昔が、
今では恋しい(のだから)。

古典文法・古文単語解説
- 長らへば
生き長らえるなら。「ば」は仮定条件を表します。 - しのばれむ
懐かしく思い出されるだろう。「れ」は自発の助動詞「る」、「む」は推量。 - 憂しと見し世
つらいと思っていた時。「し」は過去の助動詞「き」の連体形。 - 今は恋しき
今は懐かしく思う。「ぞ」による係り結びで「恋し」が連体形。
作者・藤原清輔朝臣について
藤原清輔朝臣は平安時代後期の歌人・歌学者です。
父は百人一首79番の藤原顕輔で、歌学書『袋草紙』を著しました。
この歌は『新古今和歌集』所収。つらかった過去が今では懐かしいという実感から、現在の苦しみも将来には懐かしく思えるだろうかと見つめています。
和歌を味わう
和歌のソムリエ
今のつらさも、いつか懐かしい思い出に変わるのかな。
「今どんなにつらくても、未来にはきっと良い思い出になる」と励ましてくれる歌です。
かつてつらいと思っていた日々が、今では懐かしい。
そこから歌は、今の苦しさも、時がたてば懐かしく思えるのだろうかと自分に問いかけます。
ただ前向きに励ますだけではなく、「しのばれむ」と自発の形で、懐かしさが自然に訪れるかを問います。過去の記憶が現在の感じ方を変えたように、今という時間もいつか別の姿で思い返されるかもしれません。
語呂とイラストで覚える
※語呂とイラストは歌の意味とは無関係です。
関連リンク
- 前の歌:83番「世の中よ道こそなけれ思ひ入る」皇太后宮大夫俊成
- 次の歌:85番「夜もすがらもの思ふころは明けやらで」俊恵法師
- 今宵の月を後に恋しく思う歌:68番「心にもあらで憂き世に長らへば」三条院
- 偲んでも尽きない昔を詠む歌:100番「百敷や古き軒端のしのぶにも」順徳院
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